【沙耶の唄】の感想

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【沙耶の唄】の感想

2016年12月17日 古城

6,686文字

 

 

それは、世界を侵す恋。

沙耶の唄

パッケージ画像

公式ジャンルサスペンスホラーADV
メーカーニトロプラス
発売日2003年12月26日
通常価格2,800円(税抜)
パッケージ購入駿河屋・Getchu.com
ダウンロード価格2,300円(税抜)
ダウンロード購入DMM・Gyutto・DLsite・DiGiket

  【ゲーム属性グラフ
ゲーム属性:シナリオゲー

シナリオ虚淵玄
原画中央東口
音楽ZIZZ STUDIO

おすすめ度:★★★★☆


知名度:
ストーリー
テキスト
キャラクター
演出
システム:7
ゲーム性:5
CG
Hシーン:7
BGM
主題歌


ポイント:短い、攻略が容易、純愛、グロテスク、ロープライス


満足度:84


 

 

 

作品の紹介

 

 

【あらすじ】

 爛れてゆく。何もかもが歪み、爛れてゆく。
 交通事故で生死の境をさまよった匂坂郁紀は、いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。
 彼に親しい者たちが異変に気付き、救いの手を差し伸べようにも、そんな友人たちの声は決して郁紀に届かない。
 そんな郁紀の前に、一人の謎の少女が現れたとき、彼の狂気は次第に世界を侵蝕しはじめる。

 

 

今やアニメ業界でもすっかり有名となった「虚淵玄」氏がシナリオ担当の名作。

純愛ゲーと名高い、サスペンスホラー作品です。

グロテスクな要素があるので、おすすめ度を星4つにしましたが、間違いなく面白い作品です。

 

 

私が持っているのはパッケージ版です。

所持証明

今現在は廉価版、ダウンロード版で手に入ります。

 

 

 

どんな人向け?

 

 

・グロ耐性がある人

・「純愛」について考える機会がほしい人

・普通の萌えゲーなどに飽きてきた人

・グイグイ引き込まれる作品が見たい人

・虚淵玄のファン

 

アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」や「Fate/Zero」など虚淵氏の描く重厚な世界観が好きな人は合うと思います。

多少グロ要素がありますが、ボカしたり明度を下げたり出来るので、「グロいのが本当に無理」って人以外は大丈夫だと思います。

私としては緑川さんボイスがあるだけで “買い” なのですが。笑

 

 

 

ストーリーについて

 

 

プレイ時間は、ゆっくり読みすすめても10時間くらいあれば終わるかと思います。

物語に惹きつけられてあっという間に終わってしまった印象です。

 

 

特殊な状況下での愛を描いている作品で、短い時間ながらもハラハラする展開、怖い展開、熱い展開、胸に響く展開、様々なものがつまっている作品です。

ホラー作品としても良く出来ていて、思わずビクッとしてしまうシーンもありました。

気になる人はネタバレなどを見てしまわないうちにご購入されることをオススメします。

 

 

こちらの公式デモムービーを見て、惹きつけられるかどうかも購入の参考にしてみては。

 

 

 

・攻略

選択肢は2ヵ所しかないので、自力攻略は簡単です。

 

 

推奨攻略順は下の攻略を見て下さい。


最初の選択肢と、次の選択肢の場面でセーブして下さい。

セーブ1

取り戻したい→END1

セーブ1から始める。

もういらない→物語が続きます。

セーブ2

涼子に電話する→END2

セーブ2から始める。

郁紀に電話する→END3


END1→2→3の順でクリアするのがおすすめです。

END2と3は逆でも大丈夫ですよ。

 

 

 

テキストについて

 

 

ビジュアルノベル形式です。

画面全体にテキストが表示される形式なのですが、視認性が高いです。

多少難しい漢字を使っている場面もありますが、フリガナが振ってあります。

とくに分かりづらい表現もなく、テンポ感よく読み進められます。

 

 

心理描写がしっかりされているため、物語の矛盾などあまり感じることなく読み進めていけるはずです。

主人公以外の視点に切り替わる場面もありますが、違和感なく入っていけます。

 

 

特に、主人公の隣の家に住む「鈴見 洋祐」の日常風景の描写は圧巻でした!

 

 

 

キャラクターについて

 

 

この項目はネタバレを含みます。

私がどう思ったかを知りたい人は、プレイ後にぜひ見てみて下さい。

次の項目(演出について)へ飛ばす人はこちら

 

 

※パッケージ裏画像

パッケージ裏画像

 

 

 

沙耶(さや)

沙耶

CV:川村みどり

謎の少女。
失踪した父親、奥涯雅彦を探すうち、入院中だった郁紀と運命的な出逢いを果たす。

とても可愛らしい見た目の女の子。独占欲がつよく焼きもちやきな一面もある。

こういう風に書くと、ただ可愛らしいだけのヒロインに見えるから不思議。笑

 

 

ほかの種族に寄生して、種を繁栄させる生物(沙耶)が、ほかの種族(この物語では人類)のことを学ぶうちに、人間らしくなってしまったというのは、なんとも皮肉な話ですね。

 

 

ENDごとに沙耶について触れてみます。

 

 

END2

沙耶も郁紀も死んでしまい、耕司が一人で絶望の中生きていくルートです。

沙耶は、最後に息絶える寸前、郁紀のところまで這っていき「彼の頬を優しく撫でて」朽ち果てます。

彼女は、命が果てるその瞬間まで郁紀のことを慈しむのです。

 

 

最後まで友達思いだった耕司。沙耶が死んだと思い、生気がなくなってしまった郁紀。最後まで郁紀を愛した沙耶。

相手のことを思っていても相手を幸せにしてあげられるとは限らない。それぞれの思いがぶつかりあった切ないルートでした。

 

 

END3

本来の目的である “種の繁栄” ではなく郁紀の為の世界を作った「新世界のアダムとイブ」的な話のルート。

ここで初めて沙耶が唄うのですが、そのCGのなんと美しいことか。

羽のようなものを広げて、キラキラ光る白い粒子を飛ばしていましたね。

ふと気になって、この「唄」という言葉を調べてみたのですが、以下の意味があるようです。


唄には「止」の意があるとされ,法要の最初に仏を賛美し一座を静粛にする役割を果す。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


 

法要の初めに身心を静める意味で唱える曲。

世界大百科事典 第2版


新しい世界を作るにあたり、心身を静めていたのでしょうか。それとも滅ぼす種族に対する法要の意味があったのでしょうか。

 

 

病室でこちらを覗き込む沙耶

思い返してみればこのシーンって、孤独に絶望し、それでも希望を失っていないという如何にも人間らしさ溢れる表情のCGだったのかもしれません。

 

 

 

匂坂 郁紀(さきさか ふみのり)

郁紀

CV:氷河流

本編の主人公。
不幸な事故を境に、現実と悪夢の境界線に囚われ続けることになる。

郁紀「俺は人間をやめるぞ! 沙耶ーーッ!!」

彼について一言でまとめるとこうなります。笑

 

 

いやぁグリーンライトリバーさんの声が格好良すぎてもうそれだけでも買った価値がある作品でした。

冷徹な声、沙耶に対する優しい声、怯えている声、色んな表情が声によって表現されていたと思います。

耕司視点のとき、ふいに主人公に声を掛けられるシーンでビクッとしました。主人公に驚かされるのは初めてです。笑

 

 

郁紀は、頭がよく愛情深い青年です。

序盤こそ怯えてはいましたが、

「自分の見えている世界」と「現実の世界」、「自分の行っている行動」と「傍から見てその行動がどう見えるか」、その2つの側面を理解した上で、なお沙耶のことを一番に考え行動していましたね。

 

 

結局人間って自分が見えている世界がすべてなんですよね。

自分の見えている世界が本物かどうかなんて証明出来やしないんですよ。そういった命題に挑んでいった哲学者は多いのでしょうが。

「我思う、故に我あり」という言葉で有名な「デカルト」は、この世の中に存在するものは、すべて嘘かもしれない、そう思いすべての存在を疑い続けました。

本当に存在しているかの証明なんて、出来やしない。

疑って疑って、そうしているうちに1つの事に気付きます。

「すべてのことを疑っている自分自信の存在は『疑えない』のではないか」ということをです。

けっきょく証明できたのは、「自分」という存在のみ。他のことは、その存在が確かなものなのかは証明できない……

そう、結局自分の見えている世界だけは確かなのです。

そう考えると、郁紀の気持ちだって理解出来ますよね。

 

 

小学生のころ「うんこ味のカレー」か「カレー味のうんこ」どっちがいいか? みたいな下らない問いかけがありましたが、自分ならどっちだろう……

沙耶の唄をプレイしてそうした事が頭に浮かびました。笑

あなたはどっち派ですか?

 

 

ただ食人(カニバリズム)にたいしては少し引っかかりました。

美味い不味いの問題ではなく「体への影響はどうなのか」という部分です。

ま、どちらにせよあんまり想像したくはないのですが。

 

 

物語の中盤以降、郁紀が人間的感覚から乖離していくにつれて、耕司だったり丹保だったりに視点が移っていく流れは「上手い」としか言いようがありません。

 

 

Q―これは純愛じゃないだろ。特殊な状況だから沙耶と結ばれただけでしょ?

A―物語をよく読んで下さい。沙耶がレ◯プされた後のやり取りでこんなものがあります。

「僕が沙耶に優しいのは、僕が事故に遭ったからだって……そう君は思ったんだね?」

「……うん」

 悄然と頷く沙耶に、僕は微笑してかぶりを振った。

「違うよ。それはただの始まりでしかない」

「……?」

「そんな簡単なことじゃないんだよ。
僕と沙耶が出会って、それから二人で過ごした時間の――その一日一日の積み重ねが、今の僕らの関係を作ってるんだ。解るかい?」

「郁紀……」

「あの日から今日まで、沙耶と一緒にいた僕だから……沙耶に優しくして、大切にしてあげたいって……
そう思う僕になった。そう思われる沙耶になったんだ。これって――大変なことだろう?」

 

 

 

戸尾 耕司(とのお こうじ)

耕司

CV:片岡大二郎

郁紀の親友。
郁紀の怪しげな言動を訝りつつも、仲間たちを支えていこうと奮闘する。

この物語の真の主人公と言っても過言ではないかもしれません。

見た目からして、背が高くて精悍で男らしい感じです。

性格も、心優しく、気遣いができ、頭もよく、勇敢で、洞察力と直感力がある。

そして何より友人思いなのです。

ついでに言うと喧嘩も強い。笑

 

 

自分の友人が、人間的価値観から見て『人ならざるもの』になったとして、最後まで相手のことを慮ることができるのでしょうか。

月並みですが、彼は本当に格好良いな、と思いました。

 

 

彼が生き残るENDの時

「純然たる真実は毒になる」

そうした表現がされていましが、どうなのでしょう。

私は世の中綺麗なだけじゃないし、かといって汚いだけではない。そう思っていますけど。

 

 

 

高畠 青海(たかはた おうみ)

青海

CV:海原エレナ

耕司の彼女。
郁紀の豹変によって悩む瑶を心配する、心優しい女性。

直情的だけど、正義感が強く友人思いな女の子です。

行動力に溢れていたり、感情的なキャラクターって一番最初に退場してしまうことが多いですよね。笑

いや……笑えないけど。

彼女が幸せに過ごすルートがあってもよかったんじゃないかな?

 

 

 

津久葉 瑶(つくば よう)

瑶

CV:矢沢泉

青海の親友。
郁紀に想いを寄せていたものの、事故を境に人が変わった郁紀の態度に戸惑い、気に病むようになる。
つい他人に依存しがちで、場の雰囲気に流されてしまうことが多い。

うーん。彼女の境遇には心が痛みました。

下半身はたちました(最低)。

冗談は置いておいて、優しくて気が弱い女性ですが、自分の性格を客観的に把握出来ているのは凄い部分ですよね。

 

 

……まだ私……好きな人にキスしてもらったことも、なかったっけ……

この一文に切なさを感じました。

 

 

余談ですが、彼女の服って性格に似合わずエロティックじゃないっすか?

 

 

 

丹保 凉子(たんぼ りょうこ)

凉子

CV:佐藤まこと

事故の後遺症に悩む郁紀の主治医。
過去に奥涯雅彦と何らかの接点があったらしい。

この人もまた物語のキーマン。

っていうかこの人が活躍してくれなきゃ人類が終わります。笑

クールで冷徹な感じですが、耕司に再三釘を差していた事を考えると「心優しい女性」なのでしょう。

 

 

あ! そうそう。

作中にでてきたスピリタスですが、私も飲んだことがあります。

体がブワッと熱くなる感覚がありました。寒い場所で飲むには最高でしょうね。

丹保先生は、スピリタスと銃がよく似合う女性です。

 

 

 

奧涯教授

アニメやゲームなどにでてくる研究者って、奧涯教授みたいな考え方の人が多いイメージです。

どういう事かというと「人間も数ある生物の1つ」みたいな考え方というかなんというか。

いや、実際そうなのですけど。

 

 

例えば人間の生命を脅かすような危険生物が現れたら駆除しようとしたりすると思うんですよ、普通は。

ただこういった価値観の人って、「その生物はそういう習性なのだ」「それを排除しようとするなんて、なんておこがましいことか」という考え方だったりするのです。

 

 

これはこれで考えの1つとして「あり」だとは思うのですが、そうした考えが元に人類が滅亡してしまっては元も子もありません。

人類の一般的な価値観から外れている科学者を、マッドサイエンティストと呼ぶのだと思います。

そういった意味で、鳳凰院凶真さんは一般人です。笑

 

 

しかし奧涯教授は「ただ娘の幸せを願っただけ」なのかもしれません。

人類はどうなろうと娘が幸せになってくれればそれでイイ。

ある種、「郁紀」と「沙耶」だけじゃなく、「奧涯教授」と「沙耶」の親子愛もまた1つの純愛と言えるのでしょう。

 

 

 

演出について

 

 

SEの使い方が非常に上手いです。

ホラー要素があるのですが、SEが上手く使われていたこともあり、思わずビクッとしてしまった場面がありました。

 

 

その他、地の文章のところで、沙耶が独り言を呟いているの音声が流れたりと、セリフの入れ方も上手いと感じました。

 

 

 

システムについて

 

 

充実していると思います。

個人的にはフルスクリーンをキーボードのFに配置しているのが使いやすかったです。

ただマウスよりキーボードの方が利用しやすい感じで、マウスでプレイする場合は少し使いづらいかもしれないな、と感じました。

何が言いたいかというと「ビジュアルノベル形式にするなら右クリックで文字消去をさせてくれ」ということです。

 

 

 

ゲーム性はあるか

 

 

一般のアドベンチャー形式のゲームです。

全ルートクリア後にオマケで「STAFF COMMENT」が見られるので必見です。

 

 

 

CG

 

 

色使いが非常に上手いです。

 

 

サンプルCG1

サンプルCG2

こうして並べてみると雰囲気がガラッと違って見えるのが分かるかと思います。

(ちなみに作中だとサンプル画像と違う色使いですよ)

 

 

基本的には黒を基調とした「不安」「絶望」「陰鬱」などの印象をうける背景が多く、「狂気」は赤っぽい色で表現したりと、シーンによって「色」をうまく使っています。これによって印象が大きく変わります。

 

 

END2で主人公の郁紀の「白を基調としたCG」が見れるのですが、このCGはだいぶ印象に残りました。

今まで黒や赤で彩られてきたCGと真逆の印象の「白」。

「なんて綺麗なんだろう……」そう思いました。

作中の展開に合った、効果的な使い方をされたCGだと思います。

ぜひともプレイして確認していただきたいです。

 

 

 

Hシーン

 

 

フェチ:特になし

エッチシーンサンプル1

思ったよりもHシーンは頑張っていた印象です。尺は短いですが……。

基本的には和姦なのですが、

エッチシーンサンプル2

中には陵辱っぽいシーンもあります。

私としては、そういうシーンは結構好みです。笑

 

 

この物語において、Hシーンは大切な要素の1つだと思っていますので、ある程度高い評価にしました。

 

 

 

BGM

 

 

すごくダークで重厚なBGMが印象的です。

不穏な空気を出していたりする曲も多く、ストーリーとよくマッチしています。

なかには熱い曲もあるのですが、見事にテンションを上げてくれました。

 

 

ただ、サントラが欲しいかと言われたら「う~ん」って感じです。笑

 

 

頭に残りにくい曲もちらほらとありましたが、沙耶のテーマ曲はやたらと頭に残ります。

 

 

 

主題歌

 

 

沙耶の唄 / いとうかなこ

心が洗われるような良い曲です。

歌謡曲のような懐かしさを感じる曲。

 

 

ガラスのくつ / いとうかなこ

プレイ後の余韻にそのまま浸り続けられるような曲でした。

 

 

 

その他の要素

 

 

・CG LIBRARY、SOUND LIBRARYのみの実装となります。

・3つのルートをクリア後、右下に「STAFF COMMENT」が現れます。

 

 

 

まとめ

 

 

ホラーテイストな世界観と、惹き込まれるテキストが魅力的な良作です。

ぜひともプレイしてみてください。

 

 

 

パッケージ版

 

駿河屋で「沙耶の唄」を検索。

 

Getchu.com

 

 

ダウンロード版

 

DMM→沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2

Gyutto.com→沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2

DLsite.com→沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2

DiGiket.com→沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2

 

 

 

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