【クナド国記】のパッケージイラスト

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【クナド国記】の感想

2022年1月14日 古城

10,440文字

――これは1000年もの間戦い続けた人類が、
    失ったかつての文明を、歴史を取り戻す復興の物語。

クナド国記Purple software
【クナド国記】のパッケージイラストゲーム属性:シナリオゲー
ジャンル ―― 破滅を回避した人類が文明を復興していく"再生と青春の物語"ADV
発売日  ―― 2021年12月24日
パッケージ版価格  ―― 9,800円(税抜)
ダウンロード版価格 ―― 8,580円(税込)
スタッフ
シナリオ御影
原画アサヒナヒカゲ/克
SD原画こもわた遙華
主題歌 ―― 桜花千爛(Vo.橋本みゆき)
挿入歌 ―― 拳恋一擲(Vo.山崎もえ)
あらすじ

西暦2034年。
“鉄鬼”という金属生命体が発生し、人類のほとんどが駆逐された。
金属製品も使用不可となり、文明や技術すら失われる。
鉄鬼の活動がゆるやかな“隙間”でのみ、人類は生き延びることが出来た。

それから1000年後。
ひとりの英雄が、鉄鬼の中核たる存在のひとつを打倒した。

『人類の命運を賭けた戦いは、100日前に、終わりました』
『だから、これから始まる物語には、“希望”や“幸せ”しか残されていません』

舞台となるのは「カント」と呼ばれる国。
総人口800人の能力者たちが暮らす、和風文明。
戦いは終わった、が。
生き残るために戦い続けてきたカントの人々は、個性や文化を失っていた。
一般住民は皆、狐の面をかぶった「誰でもない者」でしかなかった。

「“希望”や“幸せ”って、なんですか?」
「わたしたちは、戦う以外になにをすればいいのか、全然、わからないのです」

そんな時、1000年前から冷凍睡眠されていた青年が発掘される。
青年――彼が、この物語の主人公となる。

彼は、冷凍睡眠の弊害ゆえか記憶喪失だった。
自分のことはわからなかったが、しかし、文明や文化などの知識は所持していた。

「わたしたちと、この世界に希望や幸せを生みだすと約束していただけますか?」

別世界のようなカントで目覚めてしまった主人公。
衣食住の保障と引き換えに、彼はカントに文化をもたらしてくれと頼まれる。

彼の物語は、人類の命運を賭けた戦いが終わったあとに始まる。

これは、珍妙な学園生活を謳歌する話であり。
喫茶店と貨幣経済の話であり。
統治者に必要な資質と努力の話であり。
何者でもなかったひとりの少女が、夢を抱くまでの話である。

そして――“英雄”の死の真相と、“彼”の正体についての告白だ。

――公式サイトより引用

評価

評価おすすめ度
【クナド国記】の評価★★★☆☆
満足度
満足度82点

作品の紹介

今回は【クナド国記】を紹介します。

エッチシーンが同メーカーの過去作に比べてパワーダウンしています。最終ルートが期待した方向性と違う感じた人もいるでしょう。

それでも私はとある展開が刺さりました。

ぐさぁーっ!

春姫ルートについてどう思ったか、ぜひとも既プレイ者と話したいなぁと思っています。

所持証明

私が所持しているのはパッケージ版です。

どんな人向け?

  • 能力バトルをみたい人
  • 異世界転生モノっぽい話が好きな人
  • 幼くて可愛らしい双子とイチャラブしたい人
  • 公式サイトをよくチェックして、自分に合いそうだと判断した人
  • 体験版の範囲を楽しめ、提示された物語の方向性に納得した人

攻略情報など

プレイ時間

私のプレイ時間は、ボイスをしっかりと聞いて25時間ぐらいかかりました。最初のエッチシーンまでは3時間半です。

 

攻略情報

非常に分かりやすい選択肢ですので、攻略サイトは必要ないでしょう。推奨攻略順は、分岐順『 優里 → 茜&葵 → 春姫 』です。

 

システム

難易度修正パッチシーンジャンプ
簡単あり可能
備考

感想

どんなお話?

本作の世界では「鉄鬼てっき」と呼ばれる金属生命体により、人類のほとんどが駆逐されています。文明や技術すら失われているのです。

舞台となるのは「カント」という名の国。カントの周辺にいた鉄鬼のボスのような存在が、一人の英雄により倒されました。

金属的な……竜……か?

 

そんな世界に、1000年前から冷凍催眠されていた主人公が目覚めることになるのです。

目覚める前に夢をみました。

夢のなかで謎の女性から、次のようにお願いをされます。

「改めて――あの子たちと手をとりあい、この世界に希望や幸せを生みだすと、約束していただけますか?」

これから出会うであろう人たちと手をとりあい、世界に「希望」と「幸せ」を生みだしてほしいと。

そして……

「“言霊”――断定や命令系の言葉によって、耳にした人物や世界を従わせることが出来る力です」

言霊ことだま ”と呼ばれる特殊な力を授かるのです。

主人公は目覚めます。

うわああああああ

主人公は、個性や文化を失った人々がいるカントの国で、文明の発展を手助けすることになるのです。

 

現代知識 [*1] を持った主人公が、文明の衰退した世界にそれを伝えていくという、

[*1]説明しないでも分かると思いますが、正確にいうと「過去の優れた知識」のことです。

「バトル要素のある異世界転生モノ」っぽい作品です。

 

 

ヒロイン

春姫 CV:秋野花

春姫ヘッダー画像

カント国の統治者で、最強の言霊使い。

立ち絵の表情がゆたかで可愛らしい。

春姫のむくれた顔

むくれ顔や、笑っときのゲスい顔、涙目などが好きです。

 

 CV:蒼乃むすび
 CV:小波すず

茜&葵ヘッダー画像

左から茜・葵

双子です。風をあつかう能力者である姉のあかね。雷をあつかう能力者である妹のあおい

茜のお姉さんぶるところも、葵の子供っぽい無邪気なところもどちらも可愛い。

近年人気が高まっていて、プレイベートでも仲がいいらしい蒼乃むすびさんと小波すずさんのコンビを声優に起用しているのも強い。

 

優里  CV:鈴谷まや

優里ヘッダー画像

怪力の能力をもつ一般人。

最初は主人公にたいしてツンツンしていますが、後に、いちばんの主人公の理解者となってくれます。

 

 

特徴

提示された物語の方向性

わりと序盤(体験版の範囲)で、どのような内容の作品なのか提示されます。

これは、珍妙な学園生活を謳歌する話であり。

喫茶店と貨幣経済の話であり。

統治者に必要な資質と努力の話であり。

何者でもなかったひとりの少女が、夢を抱くまでの話である。

まあ、カントの住人は脳みそまで筋肉――もとい、効率や即断を常としているので、あなたたちが続きを読みたくなる要素も提示しておこう。

この物語は――

“英雄”の死の真相と、

“僕の正体”についての告白だ。

あらすじにも同様のものが記載されていますし、公式サイトにてストーリー構成も提示されています。

つまり本筋の春姫ルートにて、

“英雄”の死の真相と、

“僕の正体”についての告白だ。

の部分が回収されるワケです。

ここが評価が分かれている部分でして、春姫とのストーリーを求めていた人は拍子抜けしたんじゃないでしょうか。

私としては、事前に提示された情報から予想したとおりでしたし、好みの展開だったので、春姫ルートも好きなのです。

 

能力バトル

「“吾が一撃は、鉄をも砕く”」

言霊の力をさまざまな形で活用する展開もあれば、風や雷の能力を使って戦う者もいる。能力で劣る者が、戦術を生かして戦う場面もある。総じてバトル展開は面白かったと思います。

バトルモノの作品のなかには、描写が拙く、何が起こっているのか理解しづらいものもあります。しかし本作では、丁寧に描かれていたので把握しやすかったです。

 

演出

滝と川がうつる背景画像

Purple softwareは演出にも凝ったメーカーですが、本作でも水面が揺れる演出が綺麗でしたね。たとえば上の画像のシーンでは、滝が流れていて、水面が揺れていて、水しぶきがあがっていることが演出により表現されていました。

あと、旗がはためいていたのも印象に残っています。

旗が……はためく……ププッ(*´艸`*)

 

SDイラスト

優里のSD絵

は? 可愛すぎかよ!?

 

サービスシーン

優里「その……色々ありまして、警護だけでなく、あなたの……信様の身の回りのお世話も任されております。なんでも命じてください」

「……これで、満足ですか?」

「どんな命令でも従う」と言っている優里にたいし、「嫌な命令は断ってもいい」ということの例え話をするのですが、勘違いをされ下着を見せてくるシーンがあります。

ナチュラルに「嫌な顔をされながらパンツを見せてもらうシチュ」を入れていて、こういう性癖あふれるサービスシーンを上手いこと入れる手腕に膝を叩いて喜びました。

いや……別にこのシチュ自体には興味ないのですが……。

 

 

エッチシーンについて

卑語あり。ピー音なし。アナルモザイクなし。

 

発売前から、公式サイトでは下記の情報が出ていました。

  • Hシーンは全13シーン
  • 1回ごとにメインとなる1シチュをはっきりさせる
  • シーンの長さを統一する

私は、それを承知で予約して購入しました。

それでも……それでも言わせてほしい。

アクアの顔芸

どうしてだよおおおおおおおおおおおお!

ということで、まぁ不満はありますが、シーン数とCG枚数に関しては納得済みなんで、その話題はこれでやめます。

 

問題はもう1つあります。

なぜか、克さん原画のヒロインだけ愛液の描写がない。

アクアの顔芸

どうしてだよおおおおおおおおおおおお!

いや、なくなって初めてそのありがたさに気づきましたよ。

愛液って淫らさが増すアイテムだと思っていましたが、それだけじゃない。

愛情のバロメーターにもなっていたんです。

つまり「濡れているほうが、興奮しているし愛情を示してくれている」という感覚を、知らずしらずのうちに味わっていたワケです。

 

なぜ愛液をなくしたのか。

これはあくまでも推測ですが、双子ちゃんがロリっぽい見た目なので、「これは性行為じゃないですよ」ってポーズをとるために愛液を規制した。そして双子ちゃんだけ愛液がないのはおかしいからと、克さん原画のヒロインはみんな愛液をなくすことにした……いや、さすがに無理があるかな。

愛液カムバック!

 

卑語と陰毛

さて、ここまで不満点を挙げましたが、それでも私はHシーンを高評価にしています。その理由もふくめて、ここからはポジティブなことを挙げていきましょう。

「ふ、ああ、あああ……! し、信様! 信、様! 信様の、おちんちん、私、すごく、すごく、好きです……!」

まずはカント国のみなさま、日本人のみなさまに感謝を述べなければなりません。

1000年経っても「おちんちん」という言葉を残してくれてありがとう。

感動しました。これが歴史・文化・伝統というやつですね。

代々「おちんちん」あるいは「おまんこ」という言葉を伝えてきてくれた先人には、頭が上がりません。

これからも、受け継がれた意思を後世に残すために尽力します。

 

そして陰毛が美しすぎる。

なんですかこれ? 美人外国人のヌードモデルですか!?

カントの住人は、顔を隠して生活しているのに、アソコは綺麗に処理しているんですか?

ドスケベ民族やんけ!

 

3Pとフェラ

双子のWフェラ

双子ちゃんとの3Pも素晴らしかった。いや本番シーンは少ないんですが、Wフェラだけでも最の高です。

一応メインヒロインは全員しっかりとフェラが用意されていました。

 

尻フェチ

69構図でのフェラ

これ以上醜態を晒したくないので、言おうか言わまいか迷いましたが……

アナルも綺麗だった。

69の構図なのに、ただのフェラなのがめっちゃ好きです。最高のアングルです。

 

ということで、テキストは問題ないですし、卑語は豊富ですし、イラストはエロいですし、陰毛やアナルの描写が良いです。

私と似た性癖の人なら興奮できるんじゃないすかね。

 

 

各ルートの感想

エッチシーンの感想で醜態を晒しまくった気がしますが、ここからはきちんと思ったことを書いていきます。

春姫ルートの考察……という名の見解も書いています。

既プレイ者は、ぜひとも見てくださいね!

ネタバレ(クリックで展開)

 

優里ルート

カントでは、生まれた子供は親元をはなれて集団で育てられるため、親子のつながりが希薄です。

しかし優里ルートでは、我が子を、父親を認識した互いが、押さえつけていた特別な感情を溢れさせるシーンが印象的でした。

「ありがとう、お父さん!」

「どいてくれ、頼む、通してくれ!」

「そういうものだから」「仕方ないから」と受け入れていた常識を覆し、仮面を外し、本当に父子として歩み寄ることになるのです。

そしてラストでは、新しい家族の形の象徴として、信くんと優里ちゃんが結婚式をあげることになります。

いつの時代も普遍的に通ずる価値観はあるんだなぁと思いました。

 

茜・葵シナリオ

茜と葵のシナリオは、「成長」が描かれていたように思います。

深く考えもせずに、春姫を倒して統治者になりたいと思っていた茜。お姉ちゃんの言うことに従う葵。

茜は、統治者になることにどういう意味があるのかを考えるようになり、葵は、姉に反発をしてでも手に入れたいものを見つけます。

「信お兄ちゃんは、葵と子どもを作るの……いや?」

性の目覚め……エロすぎかよ!?

 

死鬼と八剣の戦い

そして作中でも、死鬼2体との戦闘シーンがいちばん白熱していたように思います。

「覚悟、わけてあげる!」

高度4000メートルでの頬へのキス……マジでロマンチックで好きです。笑

 

茜と葵の新衣装

信の恋人になってからは、髪型や服装を変えることもあり、だんだんと女の子らしくなっていくところが可愛かったです。

もちろんルートの入ってからも「成長」は描かれています。一花という少女との交流をとおして、「人々がいつまでも楽しく幸せでいられるような国」をつくることを決意します。そしてラストでは、立派な統治者として皆の前にたつ茜と葵の姿がありました。

 

春姫シナリオとエンディング

つねに統治者として気丈に振るまい、けっして弱音を吐くこともなく、ときに冷酷な決断をしてきた春姫。

「春、春、僕が世界を変えるよ」

民の命を守る重責をおい、一人で頑張りつづけ、仮面をかぶりつづけてきた彼女の弱さがさらけ出されます。

「……昨日のあの醜態で、一之神、いえ、八剣の権威は失墜しました」

彼女の本心をあばいてからは、ただただ可愛い生命体と化していましたね。笑

 

■冬人との対決

冬人

そして全ての真実を知る前のラスボスとして立ちはだかる冬人。

茜と葵の力をもってしても勝てませんでした。

YOU「私は、あなたの、お役に、立て、ました――……」

しかし、YOUが鉄鬼のシステムに深くつながり、夏姫の声をとどけることで、冬人の戦う意思が消失します。

だんだんと機能が停止していくYOUの声を聞いていたら、不覚にもウルッときましたよ。笑

 

■最後の戦いへ

真実をすべて知った信は、最後の戦いにおもむきます。

春姫「“わたしを置いて、いかないで”!」

以前に春姫は、本心ではそんなことをしたくなかったけれど、夏姫にたいして黒神を討伐するようにお願いしました。

しかしこのシーンでは、素直に本心をさらけだし、「行かないで」と泣き叫びます。

ライターの御影さんは、「行かないで!」と叫ぶ女性をおいて主人公が去っていく任侠展開が好きだとおっしゃっていましたが、まさしく私も好きな展開です。最近は、女性に守られる貧弱な男キャラが多いこと多いこと……。

 

■ラストバトル

さて、ここからはダイジェストで出来事を書きつつ、私の意見も添えていきましょうか。

夏姫が「全部、消して、全部、私が幸せに生きられる世界に作り直してあげる」と言い、信の前に立ちはだかります。(もちろんこれは本心ではない。人の世は人が導くものだと考えている夏姫がそんなことをするはずもないから)

ここで夏姫の死の真相が判明。「現人神あらびとがみ」である夏姫は、死のうとしても自然と言霊の力が働き死ぬことができない。黒神といえども敵ではなかった。しかし、倒した黒神のなかから現れた信をみて、思わず「“人間”」とつぶやいた瞬間に、それが言霊となり死にかけることに……。死ぬ直前で、言霊をつかい黒神との融合を果たします。

そして、場面は再び「信 VS 夏姫」へ。夏姫に追い詰められた信は、ついに共振源への道をひらきます。鉄鬼との対話に成功するんですが、鉄鬼はただただ人間を怖れていたことが判明。

怖がっている鉄鬼たちを説得。

うるせェ!!! いこう!!!!

共振源を戦いの場に引きずりだし、決戦の舞台を銀の花園にうつす。ここで夏姫の本心が判明します。夏姫は、人々に「死んでほしい」と言われ、「消えてくれ」と願われても、それでも人を愛していた。人を助けたかった。「自分が死ねば、このさき人の世界に未来はないかもしれない」からと、黒神と融合をしてでも生き延びたのです。

夏姫「私の愛する人たちに、鉄鬼がいない、自由に生きられる世界を生きて欲しい……」

共振源の力により、信は夏姫を圧倒します。最後は「“終わりという慈悲を与えたまえ”」という言霊を口にし、勝負を終わらせます。

そして鉄鬼に、

「“終わったよ……鉄鬼たち”」

「“僕たちは、人間に、勝ったんだ”」

と鉄鬼側の勝利をつげ、

「“安らかに眠れ――冷えた鉄に、ひとつひとつの命が宿る、そのときまで”」

と安心して眠るように言霊でつげたことにより、すべての戦いが終わるのです。

最後に、消え始めていた夏姫に、自分を生み出してくれた感謝を伝えます。「ありがとう」「母さん」と。

微笑みながら消えていく夏姫

そうして夏姫は、銀の花園から姿を消しました。

 

■エピローグ

エピローグではなんと夏姫が現世に一時的に蘇ります。これは原因が2パターン考えられるでしょう。

  1. 「“終わりという慈悲を与えたまえ”」という言霊を使って夏姫を倒した信ですが、「終わりという慈悲」という言葉の曖昧さにより、夏姫に最後にやり残したこと(冬人を気持ちを伝える&春姫に倒される)を叶える余地を残した
  2. 黒神が眠ったことにより、融合していた夏姫の魂が分離、死のうとしても死ねない超越した言霊つかいの特性により、現世に残されていた信の体に入ることになった

 

夏姫と対面した春姫は、自分の気持ちを素直にさらけだし、言霊としてぶつけます。

「“あの人のいない世界なんて、壊れてしまえ”!!」「“あの人を、返して”!!」

春姫「“あの人を、返して”!!」

今まではずっと「良い子」でいた春姫。しかし心の内を見せるこの場面は、実に“人間らしさ”がありました。その強い思いが言霊となり世界そのものである夏姫にとどくのです。

夏姫
「私が世界そのものであるならば――」

夏姫
「その世界を殺すほどの想いを込められるのは、あなたしかいないと、知っていました」

夏姫
「あなたのような、ひとりの少女のわがままな想いこそ、この世界を殺すほどの力を……」

夏姫
「この世界そのものを変える力を持つのだと」

 

元々春姫に殺されるつもりでいた夏姫。彼女は、自分のような超越した存在とは違い、人として生きようとしている春姫に未来を託し消えはじめます。

しかし、もうすぐ死んでいく夏姫に声をかける人がいました。

冬人「夏……この子に、君を殺す罪を背負わせるな」

冬人
「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神」

――

冬人
「約束は、私でも使える言霊だ」

冬人
「私は八剣になって、夏を守るためにここへ戻ってくると、そう約束した」

冬人
「君をひとりにしないと」

冬人
「それを、今、果たそう」

冬人は、ただただ夏姫を想い、夏姫のために磨き上げた「知覚不能の一振り」により夏姫を斬るのです。

信や茜や葵と戦ったときには策を弄していましたが、夏姫を殺すときは、ただただ一心に磨き上げてきた技で倒すのがマジでエモい。冬人さんの一途な想いは、あまりにもカッコよすぎる……。

夏姫は、人に殺されることにより、ようやくただの人間になります。

夏姫「夏は、あなた、を……お慕い、申して、おり、ました……」

そして、人ならざるものであっては伝えることのできなかった想いを伝えるのです。

そもそも夏姫は、

  • 人(春姫)をつくりだすという禁忌を犯した時点で、いずれ人(春姫)に殺されるつもりでいた
  • 超越した言霊の力により、あと少しで自然と融合してしまうところまできていた。せめて人のまま死にたいからと、冬人に切られることを望んでいた
  • 自分のような超越した存在によるものではなく、あくまでも「人々の繋がりと意志の力」で未来を紡いでほしいと願っていた

これらの想いをもっていて、それを果たすために一時的にこの世に顕現していたのです。

だからこそ、春姫に言霊をぶつけられ、冬人に切られたことにより、すべての想いを果たし、信に体を返すことができました。

信に再び体が返ってきたのもご都合主義ではありません。

なぜなら信は、銀の花園にて「“安らかに眠れ”」と鉄鬼に言霊をかけて戦いを終わらせましたが、その言霊の影響をうけて、あの世界で自分自身も眠っていただけだからです。

 

きちんと納得できる理由により、イザナミを拒絶したカントの物語「クナド国記」と、国と人から拒絶されたイザナミ(夏姫)の物語の両軸をハッピーエンドで終えた手腕は見事だと思います。

そして、完璧な統治者としてではなく、不完全な人間としての姿をみせるようになった春姫の姿が描かれているので、まさしく春姫ルートとしても作られていたと思いますよ。

手をつないで桜を見上げる春姫と信

これ以上物語をつむぐのは無粋でしょう。

これからもカントや、そこに住む人々に幸多からんことを、心の底から、しみじみと、さめざめと、願っております。

 

まとめ

ココがイマイチ

  • 愛液の規制
  • 過去作よりもエッチシーンが減少
  • 双子の裸の立ち絵がちょっと残念
  • メインルートは賛否が分かれているようです

 

 

ココがおすすめ

  • 優里と双子のルートはかねがね好評
  • 私は春姫のルートも好きだった
  • ヒロインが可愛い
  • サブヒロインの燕が可愛い
  • アナル・陰毛などの描写が綺麗
  • 演出・音楽・システム・イラストが高品質

 

 

春姫ルートに関してはネタバレ部分にいろいろ書いているので、プレイ後にまた見に来てくださいね。

これだけは予め伝えたほうがいいと思ったんですが、夏姫は重要なキャラですがヒロインではありません。ご了承ください。

当感想記事をみて、あるいは体験版をプレイしてみて面白そうだと思った人には、ぜひとも手にとっていただきたい一作です。

パッケージ版

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