5,599文字
どんな時も――夏の青さを、覚えていた。
Summer Pockets REFLECTION BLUE -サマーポケッツ リフレクションブルー-(Key) | |
![]() | ![]() |
ジャンル ―― 恋愛アドベンチャー(全年齢対象) | |
発売日 ―― 2020年06月26日 | |
パッケージ版価格 ―― 9,800円(税抜) ダウンロード版価格 ―― 8,910円(税込) | |
評価
評価 | おすすめ度 |
![]() | ★★★★★ |
満足度 | |
![]() |
作品の紹介
夏休みの過ごし方っていろいろあるじゃないですか。
小学生のころなんかは時間が永遠にあるように感じていて、キャスター付きの椅子にのっては無駄にグルグルまわっていた記憶があります。今でもなぜそうしていたのかは不明です。
社会人となってからは、長らくそうした「無駄」をたのしむ時間もゆとりもなく、あの頃感じていた「何か」は失われていったような気がしていました。
今回紹介する【Summer Pockets REFLECTION BLUE -サマーポケッツ リフレクションブルー-】通称【サマポケRB】をプレイすれば、あの日あの時にあの頃に置き忘れてきた「最高の夏休み」を体験できますので、社会の荒波にもまれて疲弊しているあなたも、ぜひともプレイしましょう。
私が所持しているのはパッケージ版です。
攻略情報など
プレイ時間
追加ルートのプレイ時間は、ボイスをほとんど聞いて11時間ちょっとでした。既存のルートへの追加部分や、新たに投入された卓球のダブルスをするルートなどもいれると、さらにプレイ時間はかかるかと。
攻略
無数に選択肢がでてきますが、任意のキャラクターに会い続ければそのキャラクターのルートに入れるので、攻略自体はかんたんです。しかし、すべての要素を回収するとなると難しいです。
私としては、自力攻略することをおすすめします。そして一通りクリアしたあとに、各種要素を回収したほうが楽しめるでしょう。
攻略順
サマポケ既プレイ者は、お好きな攻略順で大丈夫です。
今作がはじめての人は、識は蒼&しろはルートのネタバレがあるのでラストに、のみきは蒼ルートのネタバレがあるのでその後にするのがいいと思います。
たとえば「鴎→うみ→紬→静久→蒼→のみき→しろは→識」の順ですかね。
うみはある程度進めるとルートに入れなくなるみたいです(クリア後にふたたび入れます)。個人的にはうみルートをとばして一度最後までクリアして、そのあとにうみルートをプレイするのもアリだと思っています。
システム
バックログ画面からのシーンジャンプ機能あり。
どんな人向け?
- 最高の夏休みを求めている人
- コスパに優れた作品を求めている人
- ミニゲームや収集要素があると嬉しい人
- 体験版が肌にあった人
- 泣きゲーが好きな人
-
【Summer Pockets -サマーポケッツ-】の感想
8618文字 Summer Pockets -サマーポケッツ- 公式ジャンル 恋愛アドベンチャー メーカー Key 発売日 2018年06月29日 通常価格 8,800円( ...
続きを見る
前作を楽しめた人は、今作もまず間違いなく楽しめると思います。
前作未プレイ者は前作体験版をしましょう。体験版が肌にあったのならば絶対的におすすめです。フルプライスの価格で豊富な追加要素のある完全版をあそべるのは、正直羨ましくて仕方ないです。
追加要素
新ルート
新規ヒロインが1人追加され、ルートを追加されたキャラクターが3人いるので、4つの新ルートが用意されています。
新ルートが追加されたことにより、完成されたサマポケの世界観が崩れることもなく、それどころか
どのルートも完成度がたかい。
サマポケ無印では、どこか過去作を踏襲したつくりに不満を感じていた人も見受けられましたが、さすがにここまで良いルートが複数追加されているとなれば、
傑作だと言わざるを得ません。
卓球ゲームの強化
もともと面白かった卓球ゲームですが、今作ではさらに楽しいものになっております。
駄菓子屋のばあさんの呪いを受けておきましょう。さすれば卓球ゲームの最中に
「きええええええええぇぇぇぇぇーーーーーーー!」
とキャラクターが奇声をあげはじめてカオスな展開になります。そしてしろはは奇声をあげていても可愛い。
各キャラクターに必殺技が用意されていて、巨大化したり分身したりと「テニスの王○様」をオマージュしている技がおおいです。笑

こちらは良一が服をパージして分身して奇声をあげはじめたカオスな場面
ダブルスでの卓球もでき、たとえばしろはとタッグを組めばラケットを落としたときにラケット代わりにスイカバーをくれたりと、これまたシングルスと違った楽しさがあります。

スイカバーでの卓球……実にシュールである
難易度を「絶望モード」にすればかなり歯ごたえのある……つーかめちゃくちゃやりごたえのある難易度になりますので、これがまた楽しい。
既存ルートの追加要素
テキストが追加されていたり、選択肢がふえていたり、CGが追加されていたりします。
ぜひとも最後までプレイしてください。私は新規ルートと卓球ゲームを楽しんだあとにこの記事を書きはじめました。あとで既存のルートをじっくりプレイしようと思い、とりあえず追加要素の確認のために最後までとばし気味にプレイしたのですが、最後にめちゃくちゃ最高のCGがでてきたせいで、「じっくりと再プレイをしてから記事を書きはじめればよかった」とめちゃくちゃ後悔しました。
過去の私にLINEがおくれるなら「後悔するぞ」と忠告を送りたいほどです。
ぜひともサマポケ既プレイ者も、最後までプレイしましょう。
感想
この項目はネタバレがあります。飛ばす人はこちらをクリック。
識ルート
1番泣いたルートでした。
最初はね、羽依里くんを鬼だといって逃げて、けっきょくお腹が減って行き倒れて、食べ物を恵んでもらうも最後には
「ぶえええええええーーーーー!」
と汚い(褒め言葉)全力の泣き声をあげて逃げ出す展開の繰り返しに辟易としていました。
でもさすがファイルーズあいさんですね。
わりとデビュー初期から注目されていて、声優アワードで新人女優賞をとっただけあります。
あの全力の泣き演技は本当に素晴らしかったと思います。
閑話休題。
途中から島民を救うために過去をかきかえることに奔走しはじめ、そこからはいつか離れ離れになってしまう結末が想起されて、切ない気持ちでプレイしていました。
そして、すべての島民が消えてしまう事態をつきつけられ、そのときはやってくるのです。

「うん……これで、僕が鬼さ」
羽依里くんと手をつなぎ、「おむすび」だと言う識。
そして手が触れたことにより「鬼」の役割をうけつぎ、過去へとむかうのです。
そして彼女は鬼の役割をひとりでこなし、島民を救うことに成功するのです。
「ふたりの積み重ねが、島の皆を救ったんだ」
と彼女はいいます。
「働きたくない」とか「島民に嫌われたくない」といっていた彼女は、大好きな人たちを救うための鬼の役割を、羽依里くんと過ごしたひと夏の思い出をかてに、無事に果たすことができたのです。
「君と一緒にいた夏は……僕は神山識だったんだぜ」
「神山の姫巫女でもない……」
「海賊鬼姫でもない……」
「ただひとりの……識だったんだ……」
「姫巫女」でも「鬼姫」でもないただの「神山識」という存在を知ってくれていた羽依里くんのおかげで、辛く重く孤独な役割を果たすことができたのです。
最終的には、加藤のご先祖さまが「神山識に助けられた」という事実を島民につよく訴えたこともあり、みんなから愛される『鬼姫』として語り継がれることになったのですが、予測できていたとはいえ最高の展開でした。
加藤の血をひく羽依里くんと識ちゃんの不思議な縁を感じる、ひと夏の素敵なエピソード。
静久ルート
終わってみれば素敵なルートだと思いました。
絶賛している人もそれなりにいるので少し文句を言いづらいのですが、終盤まではあまり楽しめなかったです。
静久が記憶を失っている描写がちょいちょい挟まれて、どこか不穏な展開を予測させるつくりになっていたので、羽依里・静久・紬の3人で過ごしている時間を存分にたのしめなかったのです。たとえるなら連休の最終日に「明日から仕事がある」というどこか重苦しい気分のまま遊んでいるような心持ちでした。
3人で過ごす最高の夏休み……というものを期待していたので、そういう意味でエンタメ的なたのしさを見いだせなかったのです。
しかし、終盤の展開はアッパレ。
紬は静久のことを思いやり、かけたくもない言葉を傷つきながらもかけた。
そして静久と羽依里もそれぞれが相手のことを思いやり、お互いが前に進むために別れを告げた。
そんな切ない「夏休みの終わり」が胸に響きました。
そして
傷を負った2羽の鳥が元気に羽ばたいていった描写が、まるで羽依里と静久のこれからを表しているかのように思えましたし、
羽依里・静久・紬の3人がべつの形で寄り添いあっていたことも素晴らしかった。

最初は偶然「円のなか」に入った羽依里ですが、エピローグでは静久が意図的に「円のなか」に迎え入れて終わったのも素晴らしい。
余談ですが、
静久の母ちゃんには多少は同情しています。旦那とはうまくいかずに喧嘩ばっかりで、娘のことを大切に思うも娘が優秀すぎるせいで自分は必要ないんじゃないかと感じてしまう。そりゃノイローゼにもなりますわ。
うみルート
私はうみルートが1番好きでした。
最初は「サマポケRB」という完全版商法に納得がいかない部分があったのですよ。でもうみルートをクリアしてそんな不満も吹き飛びました。
というのも前回サマポケの無印をプレイしたときに、もっとうみちゃんと一緒の時間を過ごしたかった……という羽依里くんも感じていたであろう切実な思いを私も抱えていたんですよ。
「それは決して叶うことはないことだ」という諦感にも後悔にも近い気持ちでした。
それがサマポケRBをプレイしたことにより果たされたのです。
これは無印をプレイしていたからこそ得ることができた感慨で、私にとってはなによりも大切なことなのです。
そして羽依里くんが自身のかかえるトラウマ(水泳部のこと)を乗り越えたことで、私が心の奥底にかかえていた後悔の念にかられていた傷を昇華させることができたのです。
うみルートでは「子供と大人との確執」や「トラウマの克服」というテーマが含まれていたと思います。
うみちゃんのかぶっている帽子に関するエピソードなんか最高でしたね。
何度も言いますが、うみちゃんとのひと夏のエピソードは本当に最高でした。

セリフも構図も表情も完璧すぎませんか?
のみきルート
のみきルートでも泣きました。
鳥白島をもっともっと好きになるようなエピソードでしたし、「家族」をテーマとしているのも素晴らしかった。

のみきルートを表すようなセリフと、彼女の満面の笑み。終わり方完璧すぎか?
その他
より面白くなった天善
「俺は……たっきゅん、卓球プレイヤーのたっきゅん!」
「僕かい? はは……僕はちんけな眼鏡野郎さ」
最初の選択肢が相変わらず重要すぎる
最初の選択肢は、無印でも後々まで引っ張られていましたが、今作に追加されたルートでも終盤まで引っ張られています。
私は「口説き方を忘れたホスト」を選びました。まさか卓球のゲームにも反映されるとは思っていなかったです。
ホスト妙技・甘噛み
ホスト妙技・壁打挟撃
ホスト妙技・三変酒塔
など、声優の千葉翔也さんのボイスと相まって最高でした。笑
それにしてもボイスがつくと、冒頭のポエミーな部分がよりポエミーに聞こえるのがすごい。
サブキャラの存在感が……
今作では、サブキャラの存在感も増していたと思います。
とくに徳田と定食屋のおっさん。
まとめ
ココがイマイチ
- 非18禁
- 完全版商法
ココがおすすめ
- 未プレイ者にとってはコスパが最強すぎる
- 既プレイ者でも当然たのしめる
- 最高の夏休みが過ごせる
- 卓球ゲームはとにかくハマる
- キャラクターがみんな魅力的
- 楽しくて笑えるし、切なくて泣ける
サマポケは、サマポケRBとなり真に完成しました。
サマポケ未プレイ者はかなりお得なので買うべきですし、サマポケ既プレイ者で無印をたのしめた人も買ったほうがいいです。