ヤンデレは怖い。
なにを当たり前のことを言っているんだと言われるかもしれませんが、とにかくヤンデレが怖いのだ。
今回は、恋人は愛情の量が釣り合っていないとうまくいかない……という話をしようと思います。
そこそこ前の話になるですが、当時の私の職場には厳つい顔つきの先輩がいました。
QPという漫画にでてくる原田というキャラに瓜二つなので、その先輩のことは以後原田と呼びます。
この原田、私がその職場に入った日にはいませんでした。
しかし、職場内でまことしやかに囁かれていたことがあります。
「原田が帰ってくる――」と。
原田? 帰ってくる? どういうこと? ていうか誰?
とにかく分かったことは、その原田なる人物はなにやらヤバそうな人だということ。
職場の人間におそるおそる原田という人物について聞いてみました。
なにやら付き合っていた女性と別れたそうなのですが、その後にストーカーのようにつきまとい、警察に通報されたと。
そして、かけつけた警察を殴り飛ばし、けっきょくは逮捕されたそうです。
もはや意味が不明。なぜそのような人物が解雇されないのか、しれっと職場復帰できるのか。意味がわかりません。
そしてついに原田と対面するときがきました。
えぇ……なにこの厳ついツラは……。
というかものすごくガタイがいいのですが……。組技のある格闘技をやってきた人間の特徴である「耳が潰れている」ことや、打撃系の格闘技をやってきた人間特有の「拳のつぶれ」がありました。
こいつは強い! この厳ついツラは伊達じゃない。この筋骨隆々のガタイは伊達じゃない。
とりあえず原田と敵対することはヤバいと直感した私は、芸人のサバンナ高橋も顔負けの太鼓持ちと、学生時代にありとあらゆるヤンキーたちに囲まれて生きぬいてきた処世術により、原田という人物に接していきました。
接しているうちにいろいろ分かったのですが、この原田、こんな厳ついツラには似合わず手先が器用で、DIYだったり絵を描いたり創作料理をするスキルが高いのが可愛らしいところです。しかし、そんな可愛らしい一面なんか一瞬でチャラになるどころかマイナス方向に振り切ってしまうほどのヤバい性格をしていました。
まずは人とのトラブルが多い。
原田は手先が器用なだけでなく、仕事もそつなくこなすことが出来ますし、他人にも完璧な仕事を求めます。
ちょっとでも気に食わないことがあると、ズバズバと指摘します。まぁそれに関しては全然いいと思うのですが、原田の場合は粘着質で、一度相手のことを気に食わなくなると、必要以上に攻撃したり、いつまでもグチグチとイビリ続けるのです。
んで気に食わない相手を早朝に駐車場で待ち伏せして、「てめぇコラ、ツラ貸せや」と、今日日そこらへんのヤンキーも口にしないような脅し文句で突っかかっていったりと、とにかく度が過ぎています。
そして、もう一つ厄介なのが、キレるタイミングが分からないこと。
私は原田には気に入られていたのと、仕事でのミスもそんなになかったためか、そこまでキレられることはなかったのですが、普通に雑談しているときに急に
「おいお前、10分前に言ったアレってどういう意味だよ」とか言いながらキレだしました。
雑談が進んで、もうとっくに話題も変わっていたのに、急に10分前のヒトコトにキレだした原田に焦りつつも、できる限り論理的に懇切丁寧に10分前の発言の意図を話したら、原田も納得してくれて怒りを収めてくれて事なきをえました。
多分会話している最中に、その発言の意味を考えていたら、だんだんと怒りが湧いてきたのかもしれませんが、こういうキレ方をする人とはあまり接したことがなかったので、あのときはだいぶビックリしましたね。
ここまでの話しで理解していただけたと思いますが、原田は性格に難があるためか、友人があまりいなかったようです。
私は、(仕方なく)メールアドレスを交換したのですが、とにかく原田はメールの返信スピードがはやい。シューマッハも裸足で逃げ出すほどのスピード感のあるレスポンス。3分間返信しないと「無視すんなや」と言ってくるくらいの速さ。
マジでマジで面倒くさい。私はどちらかというと連絡無沙汰なタイプの人間なのですが、致し方なしに原田には連絡を超スピードで返していました。
というか可愛い女の子ならまだ耐えられるのですが、なにが悲しくて厳つい顔つきのオッサンとの超スピードラリーを行わないといけないんでしょうかね。これがテニス界の至宝「フェデラー VS ナダル」のラリーならば見応えもあるでしょうが、「エロゲオタ VS いかついオッサン」のラリーですからね。誰もこんなん求めてないでしょうよ。
原田はこっちがドロップショットを打とうがロブを上げようが打ち返してくる名選手ですからね。フェデラーよりもナダルよりも錦織よりも素晴らしい潜在能力をもっていた名選手でした。
んで、このラリーを続けていくうちに見えてきたのが、原田はおそらく愛情が重いタイプなんだろうということ。
愛情が重いがゆえに、当時付き合っていた彼女は耐えきれなかったんじゃないかと。そして愛情のバランスの差によって原田はストーカー化したんだろうと。
こっからがやっとこさ本題になるのですが、男女の付き合いにおいて、一方の愛情が重くてもう一方の愛情が軽いと、うまくいかないのは自明の理だということ。
つまりはヤンデレヒロインの愛情を受け止めるには、主人公にも深い愛情がないといけないということ。
たとえば、たくさんのメール(今だとLINE)をおくってくるようなヤンデレヒロインだったとしても、主人公も似たような気質をもっていれば、それはむしろありがたいものに感じるのでしょう。
そこでヤンデレヒロインの深い愛情を受け止めるだけの力がない私のだした結論は
ヤンデレが怖い――ということ。
まさかこんな厳ついオッサンに愛情のバランスを教えられるとは思ってもいませんでしたよ……。というのもヤンデレ気質の女性とはお付き合いしたことがなかったですからね。今までは頭では理解していたつもりでも、本当には分かっていなかったんだと思います。
実際に愛情の重い人間と接することで、真に理解することができました。
そうそう、原田についてその後のお話ですが、彼は大きなトラブルを起こして職場をやめていきました。笑
私もうまいこと、ありとあらゆる弁舌をつくして、原田と距離をおくことに成功。
心穏やかな生活を取り戻すことに成功しました。つっても昔の職場の話なので、原田とのトラウマ思い出はもはや薄れかかっているんですがね。
グッバイ原田。グッバイフォーエバー原田。
PS:二次元のヤンデレは別に嫌いじゃありません。
QPは良い作品ですよ!