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その館で出会う“運命の少女たち”
悠刻のファムファタル(Escu:de) | |
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ジャンル ―― 刻を紡ぐ伝奇AVG | |
発売日 ―― 2024年09月27日 | |
パッケージ版価格 ―― 9,800円(税込10,780円) ダウンロード版価格 ―― 9,800円(税込10,780円) | |
評価
評価 | おすすめ度 |
![]() | ★★★☆☆ |
満足度 | |
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作品の紹介
今回は【悠刻のファムファタル】をご紹介します。
けっこう面白かったです。私の好きな系統のシナリオでしたね。エスクード作品だからか、ライターの桐月さんの担当作のなかではHシーンが多い。しかし、もう少し淫靡なHシーンを期待していたので不満を持ちました。
淡々とストーリーが進行するので好みが分かれそう。まるで、一見すると地味だけど、よく見ると顔立ちのいいメガネ女子ヒロインのような作品です。すみません、すみません、伝わりづらいうえに、失礼な例えを持ち出してすみません。

私が所持しているのはパッケージ版です。
どんな人向け?
- メイド好き
- 妖しい雰囲気の作品を求めている人
- 体験版をプレイしてキャラクターに惹かれた人
- 淡々と進むボリュームのある作品を求めている人
攻略情報など
プレイ時間
私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて 28 時間ほどです。最初のエッチシーンまでは5時間半ぐらいかかりました。
攻略情報
フローチャートがあるので、それを参照すれば攻略も容易でしょう。
セーブを取っておかなくて、フローチャートから選択肢のシーンにジャンプできます。
システム
難易度 | 修正パッチ | バックログジャンプ |
普通 | なし | あり |
備考 | ||
※公式サイトに本作の前日譚となる『ショートストーリー』があります。 |
感想
これは
咲くことのできなかった花たちが、
未来を求める物語。
どんなお話?
作家である主人公=日下部彰は、亡くなった祖母に縁のある洋館を訪れます。
その洋館では、4人のメイドが彼を出迎えました。
- 客室メイド
- メイド長
- 洗濯メイド
- 料理メイド
話を伺ったところ、メイドにお世話してもらえるうえに、お金を払う必要はないし、好きなだけ滞在していいらしい。
古城さん知っているよ。世の中には、部屋に滞在するだけで報酬が貰えるお仕事や、謎の荷物を運ぶだけで報酬が貰えるお仕事や、お金を持て余している老人の住居を報告するだけで報酬が貰えるお仕事が存在するらしいですやん。その類ですよね、きっと。
そのうえ、メイドに手を出しても構わないとのこと。
いやいやいや、そんな美味い話があるわけないですやんかいさー。
騙されたエピソードといえば、芸能関係のお仕事をしていた友人のTくんのことを思い出しましたね。Tくんの誕生日に、私の奢りで池袋に飲みに行ったんですよ。
1軒目は居酒屋で飲んで、2軒目を探しているときにTくんは次のように言いました。
芸能関係の仕事をしているし、彼になら任せて大丈夫だろうと、全幅の信頼を寄せていました。Tくんはキャッチのお兄さんと話していたので、一瞬「ん?」と疑問に思ったのですが、それでも問題ないはずだと。
その後、キャッチのお兄さんに連れて行ってもらった店が怪しい雰囲気だったんで、1杯だけ飲んでとっとと退散しようと思ったんですが……
7万円請求されました。
ぼったくりバーのカス店員はこの際許してやろう。
だがTくんよ、「東京は俺の庭だ」とかドヤ顔で語っておいてそれはないだろうが。
いや、任せっきりにしてしまった私も悪いんですけどね。事前に酒を飲んで酔っ払っていたとはいえ、キャッチについていくとかありえないですから。高い授業料を払ったと思っておくことにしましょう。
話は逸れましたが、悠刻のファムファタルをプレイして、数々の嫌な思い出がフラッシュバックして冷や汗が流れたんですよ。
しかし、そんな心配は杞憂でした。
メイドたちは、優しくてキュートな存在でしたので。
本作は、謎に満ちた洋館で、価値観の異なるメイドたちと交流するお話です。
沢山の選択肢がありまして、場合によっては刺激的な結末を迎えます。
が、基本的には暗い作品ではないのでご安心を。
本作の特徴
主人公の創作論が面白い
主人公は作家をやっておりまして、洋館に滞在しているときでも執筆しています。ときおりヒロインに創作論を語るシーンがあるのですが、なかなか興味深い内容でした。
クリア後に閲覧できるスタッフコメントによると、本作のシナリオライターである桐月さんが使っている創作方法とは、別の考え方が披露されているんだとか。
ミステリー作品ではない
プロローグこそ「ミステリー&サスペンス系」の作品だと感じるでしょうが、本作の主軸はそこではありません。生き方や価値観の違う相手との「相互理解」を深める物語です。
派手な展開は少なめで、ヒロインとの対話がメインとなっております。ですから、ストーリーの起伏を求めている人は、退屈な作品だと思うでしょう。また、ミステリー要素に期待していた人は、肩透かしだと思うでしょう。
そのうえ、ヒロインの「名前」だと思っていたものは実は「役職名」です。立場が変化すると名前が入れ替わります。集中せずに読み勧めていたら、何が何だか分からなくなるはず。
私としては、どこまでもキャラクターに寄り添おうとする優しいお話だと思いましたね。妖しい雰囲気の洋館で過ごす、雰囲気ゲーと捉えるのが良いのかもしれません。
日記の使い方が上手い
主人公が書いた日記を、プレイヤーはいつでも閲覧することができます。
思考整理のためのメモ書きから、誰かに向けたメッセージまで、様々な使い方がされていて面白かったです。
ラベンダー&ブラックリリーのルートが素晴らしい
本作の1番の魅力は、原風景の描き方である。
原風景(げんふうけい)は、人の心の奥にある原初の風景。懐かしさの感情を伴うことが多い。また実在する風景であるよりは、心象風景である場合もある。個人のものの考え方や感じ方に大きな影響を及ぼすことがある。
――『Wikipedia』より引用
誰しも原風景を持っています。その人の価値観に大きな影響を与えている要素です。

ラベンダーにとっての原風景は、寂しさを伴うものでした。子どものころに抱いた些細な想いが、彼女の心の奥底にトゲとして刺さっていました。主人公はラベンダーと向き合い、彼女の心をそっと掬い上げるような優しさで包み込みます。この物語に触れることで、私の心にも温かいものがじんわりと広がっていきました。

一方で、ブラックリリーの原風景は、物心ついたときに見た美しい光景でした。その光景があったからこそ、彼女は歪まずに生きることができ、その光景があったからこそ、主人公も彼女の心を信じることができたのです。信じることができたからこそ、ブラックリリーと真剣に向き合うことができたのでしょう。
相互理解とはつまり、どのような事柄を経て、そのような考え方に至ったのかを理解することに他ならないのかもしれません。本作のシナリオは、そんな繊細なテーマを描いていて、とても心に響きました。
申し訳程度に、館モノのお約束展開がぶっ込まれていたのは面白かったですね。
スタッフコメントのカードゲーム
クリア後に閲覧できるスタッフコメントに、謎のカードゲームが用意されていたのですが、クリアすることができません。もしも攻略法をご存知の方がいたら教えてください。
エッチシーンについて
卑語あり。ピー音なし。アナルモザイクなし。
無修正の卑語があるものの、体感で3割ぐらいのシーンにしかなかったのが惜しかった。
お気に入りのシーンは、ブラックリリーのフェラチオからの対面座位。
サブヒロイン枠の女の子2人にも、おまけで1シーンずつだけ用意されています。
淫靡な雰囲気のある作風のわりに、エッチシーンは案外ノーマルなプレイが多かったですね。もしもここがストーリーと上手く絡まってさえいれば、私は本作を大絶賛していたでしょう。お願いですからハーレムエンドをください。笑
まとめ
ココがイマイチ
- サブモニターでフルスクリーン化させてほしい
- 説明が分かりづらいシーンがある
- エッチシーンがノーマルな内容
- シナリオが淡々と進む
ココがおすすめ
- 心に寄り添う優しいお話だった
- キャラクターデザインが良い
- 最終ルートが最高だった
- 創作論が面白い
- 雰囲気がいい
- 多数の結末
前述したとおり、大きく好みが分かれるでしょう。
私は終盤のシナリオが大好きでしたね。可愛らしいメイドたちと過ごす時間や、ミステリアスな館の雰囲気を楽しみたい人におすすめします。
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