【Geminism ~げみにずむ~】の感想

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【Geminism ~げみにずむ~】の感想

2023年12月8日 古城

7,940文字

私、不完全な双子形シンメトリー――。

Geminism ~げみにずむ~CRAFTWORK
【Geminism 〜げみにずむ〜】のパッケージイラストゲーム属性:シナリオゲー
ジャンル ―― 惜夜あたらよのしあわせ探しADV
発売日  ―― 2023年11月24日
パッケージ版価格  ―― 5,200円(税込5,720円)
ダウンロード版価格 ―― 4,700円(税込5,170円)
スタッフ
シナリオ
原画長岡建蔵
音楽さっぽろももこ
主題歌 ―― twyndyllyngs 〜不具合のアリス〜(Vo. 中家志穂&中家菜穂)
あらすじ

親の因果が子に報い、生まれ出でたるこの姿。
此方彼方に相見ゆるは、双び立たざる相似形。

──東京、丑三つ時。
新月の下、相似形の少女二人が対峙する。
少女達の手には不釣り合いに見える歪な武器。
背後に控えるのは怪しい男達。

男の目的は。少女の夢は。
彼等は何の為に戦うのか?

サァサお立ち会い、夜半の忌事、
はじまりはじまり──。

――公式サイトより引用

評価

評価おすすめ度
【Geminism 〜げみにずむ〜】の評価★★★★☆
満足度
満足度80点

作品の紹介

今回は【Geminism 〜げみにずむ〜】を紹介します。

CRAFTWORKが、前作から約22年の時を経て発売した作品です。

22年ぶんの時間があれば、カップラーメンが385万4千4百個作れますよ。

だから何だって話ですけどね。ははっ。

【Geminism ~げみにずむ~】のパッケージ画像

私が所持しているのはパッケージ版です。

どんな人向け?

ご注意
―― 公式サイトより引用
  • 幸せとは何か、というテーマ性に惹かれた人
  • 双子ヒロインが登場する作品を探している人
  • 18禁作品ならではの題材を求めいてる人
  • キャラクターデザインに惹かれた人
  • バイオレンスな描写を求めている人

攻略情報など

プレイ時間

私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて8時間ほどです。最初のエッチシーンまでは2時間ぐらいかかりました。

 

攻略情報

選択肢はどれも選ぶことになるので、攻略サイトの必要はないです。一部、片方しか選べない選択肢もありますが、エンディングには影響がありません。

 

 Hシーン

卑語なし。ピー音なし。アナルモザイクなし。

 

システム

難易度修正パッチバックログジャンプ
簡単なしあり
備考
※演出や機能が強化されているダウンロード版の購入を推奨します。新品でパッケージ版をご購入の方は、付属のDLカードからインストールしてください。

感想

どんなお話?

親の因果が子に報い、生まれ出たるこの姿。

此方彼方に相見あいまみゆるは、ならび立たざる相似形。

月無き闇夜のだまし愛、果て無き浮世の赦し愛。

今宵の仕會わせガマシに非ず、定め無用の奪い愛。

サァサ、お立ち会い、夜半よわ忌事おまつり

はじまりはじまり――。

まるで「見世物小屋 ⁽*¹⁾」の口上のようなセリフが読みあげられてから始まるのは、双子の姉妹の殺しあい。

[※1]見世物小屋とは、客を呼びこみ、品物やパフォーマンスを披露する興行です。奇妙な品、珍しい芸、奇形の動物や人間などを見世物にします。お客を呼びこむときの口上(タンカ)も特徴的です。
桔梗と深紅が仕會わせをするシーン

©CRAFTWORK(※以降、サンプルCG及び、体験版の画像を使用)

この殺しあいは「仕會しあわせ」と呼ばれる儀式でして、勝ったほうが負けたほうの体のパーツの一部をもらえます。

深紅がバットで滅多打ち

©CRAFTWORK

体のパーツは、右腕、左腕、右脚、左脚、胸部、腰部の6つ。

なぜこのような怪しい儀式がおこなわれているのか。

体のパーツを揃えることができたら何がおこるのか。

殺しあいと日常の描写をとおして示されるのは「不幸な少女の幸せさがし」です。

嗚呼、儚きは我等の宿願、げに悲しきは彼等の儚夢ろまん

悲願志願は成就せり、彼岸此岸に実りたり。

我等常世に知ろしめす、業洗われたる此の姿。

惜夜あたらよの仕會わせ探し、先ずは此れにて――。

主要キャラクター

桔梗ききょう CV:中家志穂

廣杣 桔梗

自称双子の姉。天真爛漫な性格。

満面の笑みをうかべて素直に「嬉しい」と口にできるのは素敵だと思う。「辛い」「苦しい」「死にたい」などのネガティブな発言しか出てこない私とは大違いである。

深紅しんく CV:中家菜穂

廣杣 深紅

自称双子の姉。クールでツンツンしている性格。

頬を赤らめながらの「五月蝿いうるさい」という発言にはグッときた。深夜にエロゲをプレイして、奇声を発して、隣人から「うるせー」と怒鳴られた私とは大違いである。

淡墨あわすみ CV:杯榴万花

山家 淡墨

包帯だらけの怪しい風貌で、古風な喋りかたをする。

杯榴万花パイルバンカー」という奇妙な名前の声優さんだが、サンプルボイスを聞いたら一瞬で誰なのか分かってしまった。

ヒロインの痴態(オナニー)を発見して、尻穴に指をつっこんだシーンには男らしさを感じた。

月白つきしろ CV:皇帝

月城 月白

長髪の怪しい風貌で、ノリが軽くて口数がおおい。

彼が面倒をみているヒロインが人体のパーツを奪うさい、一も二もなくオマンコ(腰部)を所望したその決断力には男らしさを感じた。

Geminismの特徴

UI・演出・システム面について

UIはオシャレで良いと思います。視認性も悪くありません。

タイトル画面では、エピソードを選んだほうのヒロインが目を開けるという演出が素晴らしい。

深紅「五月蝿い五月蝿いッ!」

©CRAFTWORK

プレイ画面では、立ち絵を切り替える形式ではなく、カットインを多用しています。

既存のノベル系ADVの枠にとらわれていなくて好ましいのですが、利点も欠点もありました。

利点は、立ち絵の切り替えがないため、シームレスに場面が繋がっている感覚があること。欠点は、カットインが重なるにつれて画面がごちゃごちゃしてしまうこと。この演出を突きつめれば、より面白いものになるだろうなぁと思いました。

廣杣桔梗の“腰部”を廣杣深紅へ移動

©CRAFTWORK

勝敗によって、体のパーツの移動がおこなわれるのですが、そのときの演出が、昔なつかしのテレビ番組「クイズハンター」のハンターチャンスの演出を踏襲しているらしいです。それを知ると、シリアスな場面がコミカルな印象になってしまいますね。笑

システム面に関しては、現代の水準のものは揃っています。が、Unity製のゲームにありがちな、ボイスカットをOFFにできない、ロード画面を開いたときに最新のページにならない、右クリックでダイアログ画面を消せないなどの弱点がありました。

 

18禁要素に関して

まずはエッチシーンについて。ヒロインのイラストを隠すように男キャラのカットインが入ることがあったり、陰部が画面に写っていない場面もおおかったりと、あまり実用的とはいえません。

深紅のダルマ状態でのイラマチオはガチで性癖にドンピシャでしたけどね。

しかし、性体験により生じるキャラクター間の誤解、すれ違い。グロテスクな描写。センシティブな題材などなど、18禁であることが活かされている作品です。

グロさに関しては、あまり過激ではありません。サンプルCGを見て大丈夫だったら、特に問題はないかと。

 

姉妹の関係、友情関係、恋愛関係などを楽しめる

桔梗&深紅

深紅と桔梗。この2人は、いがみあい争うことになる。考え方のちがい、立場のちがい、想いのすれ違いなどなど、双子の姉妹の複雑な関係、対立の関係を楽しむことができます。

 

淡墨&月白

淡墨と月白。2人は争うはずの立場なんですが、とにかく仲がいい。クリアした人には通じると思いますが、徹頭徹尾、仲睦まじかったですね。最後までチョコたっぷりなトッポのような友情関係を楽しむことができます。

 

桔梗&淡墨

仕會わせにおいては、桔梗と淡墨がペアを組んでいます。

淡墨は、全身に包帯をまいているので、まっとうな職に就くことができません。

ちまちまと内職をして、小銭を稼ぐしかないのです。きわめて直接的かつ端的な表現をするならば「貧乏」ですね。

淡墨と一緒に暮らすことになった桔梗は、不便で質素な生活を強いられます。しかし彼女は、幼少期の環境が特殊で、不自由な生活を送っていた。だからこそ、日常のちょっとした出来事が新鮮にみえるのです。

目を輝かせる女の子

幾ばくかのお小遣いをもらい、お菓子を買うことができて幸せ。

安物のオモチャを買ってもらうのだが、彼女にとっては宝石のようにキラキラ輝く宝物である。

ぶらっと近所をお散歩できて楽しい。お日様の光を浴びることができて気持ちいい。エトセトラエトセトラ。

お金がないことに対する不満を抱くことがありつつも、日常のなかに楽しみを見出していく描写が私にはぶっ刺さりました。

銭形金太郎

むかし「銭金」こと「銭形金太郎」というテレビ番組があったんですよ。クリームシチューやネプチューンなど、いまや司会者級の芸人さんたちが、レポーターとして貧乏な人の家にとつげきする番組でした。

貧乏さんたちは、さまざまな事情を抱えています。貧困生活をせざるを得ない人から、夢を追うために慎ましい生活をしている人などなど。

登場する人たちは皆、貧乏ながらも楽しそうに過ごしていました。

世のなかお金は大事なのですが、それだけではない。さまざまな生き方が見られるこの番組が好きだったのです。

話が脱線しまくりましたが、桔梗と淡墨の日常エピソードは、むかし私が好きだった光景を見られたので満足しました。

 

深紅&月白

仕會わせにおけるもう一方のペアは、深紅と月白です。

月白は、お金を稼いでいて優雅な暮らしをしている。

月白の部屋に住むことになった深紅は、高級なマンションの一室で、豪華な食事や、ふかふかのベッドなどを堪能でき、何不自由ない暮らしを送ることができます。

しかし彼女は、能天気な桔梗とくらべて、悩みや、迷い、苦しみの感情がつよい。

最初は、なかなか心を開こうとはしないものの、分厚い氷のかたまりが、じょじょに解けていくかのような変化を楽しめます。

氷塊

ツンツンした状態からはじまり、しだいに頬を赤らめた顔や、満面の笑みなど、異なる表情をみせてくれるのです。

わたくしが抱いた感情を、かぎりなく単純かつ古風なワードで表現するならば「萌え」ですね。

 

以上のように、複雑な対立関係から、友情関係、はたまた恋愛関係のようなものまで描かれているんですよ。

小難しい内容の作品だとおもわれ、敬遠されているかもしれませんが、ホッと一息つけるような日常の描写もありますのでお楽しみに。

考察という名の見解

ネタバレあり(クリックで展開)

 

結末について

結合双生児」を扱っている作品でした。

本作のテーマは「幸せとは?」ということだと思いますが、作中でどう描かれていたのかを考えるまえに言葉の定義を調べてみましょうか。

仕合せ ―― なるものではなく気付くもの。生まれてきて良かったと思うこと。ずっとこのままでいたいと思える瞬間。

死合わせ ―― 死ぬまで一緒にいられること。

幸せ ―― 幸福。望ましいこと。巡り合わせ。

會 ―― 罪や過誤などを許して、人が会うことを意味する漢語。

※他人同士が「仕え合う」「し合う」ことで相喜ぶ。それが「しあわせ」の語源だという考えたかもある。

それぞれの言葉の意味を鑑みると、「仕會わせ」という単語は、なかなかどうして面白い造語であることが分かります。

桔梗と深紅が混ざり合うシーン

©CRAFTWORK

作中のラストでは、桔梗と深紅が融合して、黒髪の少女になりました。

桔梗にとって自分たちは、かけがえのない2人で、かけがえなのない姉妹だと思っていた。だから、2人で別々の体をもち、一緒に過ごしたかった。深紅に嫉妬していたというよりは、2人の足並みがそろっていない状態にたいして「ずるい」と言っていた。

深紅にとって自分たちは、2人で1つの存在だと思っていた。か弱い桔梗を守るためには、2人が1つに融合して、完璧な存在になるべきだと考えていた。

桔梗と深紅は、お互いがお互いを想い合っていたものの、考え方のちがいにより、争うことになったのです。

融合するシーンでは、お互いに胸の内を告白し、謝りあい、赦しあいます。そして、相手の幸せを願い、自分の幸せを願うことで1つになりました。

「――大好きだよ」

「「あんただけでも、幸せになって」」

「「幸せになりたい」」

「「しあわせに、なりたい」」

一連の場面での選択肢の使いかたが面白く、彼女たちは「恋をしていない」or「恋をしていた」のどちらかを問われることになるのですが、

どちらを選んでも結末に変わりがありません。

恋愛だろうが友情だろうが、お互いがお互いの幸せを願い、自分が幸せになることも願う。そうした在り方が「しあわせ」であるということなのでしょうか。

 

さて、話を少し変えます。仕會わせの前口上のなかに「親の因果が子に報い」という一節がありますが、その意味は以下のとおり。

親の因果が子に報う ―― 親が行った悪いことは、その子供に及ぶ。結果として、 何の罪もない子供が苦しむこと。

この言葉を踏まえたうえで、作中の1番最後のテキストを見てみます。

やがて時が経ち――とある産院で二人の嬰児えいじが同時に産声を上げた。

桔梗と深紅が融合したこにより生まれた黒髪の女が、赤子を産んだのでしょう。

彼女は「しあわせ」になり、良い因果が子供に受け継がれたというハッピーエンドを匂わす〆方だと私は捉えました。

 

淡墨と月白

男同士のシガーキスで終わらせるなよ。美少女ゲームだぞ。そうツッコまずにはいられませんでした。笑

しかも、追い打ちをかけるかのように、主題歌のメンズバージョンが流れてくる。思わずニヤッとしてしまいましたよ。

淡墨と月白が並び立つ絵

©CRAFTWORK

それにしても淡墨と月白の存在はおもしろい。

彼等は、あまりにも長い年月を生きてきたせいか、どちらが姉(主体)であるか競いあっていた桔梗&深紅にたいして、どちらが兄(主体)であるかを譲りあっています。

もう人生の悲喜こもごもは経験しきってしまったのでしょうか。

そんな彼らが「しあわせ」になるためにも、「仕會わせ」が必要だったのでしょうね。

「なんにせよ、僕としては割と退屈しない時間を過ごせたから、ま、良いかな~って」

「退屈しない時間を過ごせた‥‥か。その言葉は、おれ達から彼女達に手向けられる最大の賛辞だな」

「ま、ね~」

長い年月を生きてきて、お互いにしか意識をむけていなかった彼らが、桔梗&深紅と過ごした時間を「退屈しなかった」と称したのは、本当に最大の賛辞だと思います。

本編の重みが増していいですね~。

 

対比

本作の1番の見どころは、対比の関係が緻密に描かれていたこと。性格の対比から、容姿の対比まで。

たとえば姉妹の母親である廣杣紫は、容姿が整っていることが強調されていました。が、迎えた結末は、とてもじゃないけれど幸福なものだとは思えなかった。

たとえば淡墨と桔梗は、貧乏だったので質素で慎ましい生活をしていました。が、それが不幸な日常には見えなかった。

容姿や環境が、しあわせに直結するとは限りません。

しあわせとは、在り方・捉え方だと思うのです。

さまざまな対比が、作中で描いている「幸せとは?」にたいする答えの補強になっていて面白いと思いましたね。

ネットで、結合双生児に関して調べてみたのですが、手術をして分離したからと言って幸せだとは限らない。ずっと一緒だからと言って不幸だとは限らない。さまざまなケースが存在していて、実に興味深い情報をあつめることができました。

 

その他

CRAFTWORKの前作である【さよならを教えて】や、ライターの旭さんが作ったフリーゲーム【腐った果実 ‐Rotten Fruit-】の小ネタが仕込まれていましたね。

その他、タイトル画面でカーソルを合わせたヒロインだけ目をひらく演出は、本作の内容を示唆しているようで興味深かったです。

 

まとめ

ココがイマイチ

  • システム面で不便な部分がある
  • 実用性に乏しい

 

 

ココがおすすめ

  • 扱っているテーマについて考えさせられる
  • キャラクターデザインが良い
  • 主題歌の映像が素晴らしい
  • 独特な雰囲気がある
  • 音楽がGOOD

 

 

よく練られている作品だと思いました。

起伏の激しいストーリーではありません。しかし、類のない題材、雰囲気のよさ、キャラクター同士の関係性に注目している人にはおすすめ。

男女問わずに楽しめるでしょう。気になっている方は、ぜひともプレイしてください。

グロ要素は控えめですし、意外にも取っつきやすい作品ですから。

パッケージ版

ダウンロード版

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