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さぁ、祝いましょう――この悪夢の生誕を
贄の匣庭(Chatte Noire) | |
ジャンル ―― 狂気と愛憎の伝奇ビジュアルノベル | |
発売日 ―― 2024年02月16日 | |
パッケージ版価格 ―― ダウンロード版価格 ―― 税込3,960円 | |
評価
評価 | おすすめ度 |
★★★☆☆ | |
満足度 | |
作品の紹介
今回は【贄の匣庭】を紹介します。
先の気になるストーリー展開が面白かったのですが、リョナ耐性がない人にはおすすめしづらいです。
どんな人向け?
- 伝奇モノが好きな人
- オカルト・サイコホラーが好きな人
- 考察要素のある作品を求めている人
- リョナ・陵辱エッチシーンを求めている人
- コストパフォーマンスに優れた作品を求めている人
攻略情報など
プレイ時間
私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて17時間30分ほどです。最初のエッチシーンまでは5時間ぐらいかかりました。
攻略情報
一本道です。
Hシーン
卑語あり。ピー音なし。アナルモザイクなし。
システム
難易度 | 修正パッチ | バックログジャンプ |
なし | なし | あり |
備考 | ||
- |
感想
どんな作品?
ネタバレの有無
ネタバレなし。
本作のジャンルは、エログロ・オカルト・伝奇モノです。
ゲームを起動すると、可愛らしいイラストとともに、グロテスク表現 ON-OFF の設定画面があわられます。
本編をスタートすると、物々しい警告文が登場。
本作は、ネット掲示板に投稿されて、今もなお語り継がれている都市伝説「コトリバコ」を元にした伝奇ホラーです。それなりに胸糞悪い展開がありますのでご注意を。
ストーリー展開とエッチシーンがリンクしているので、R-18版 のプレイを推奨します。リョナ陵辱シーンがメインで、エッチシーンの7割ぐらいは血に塗れていました。
この手のジャンルにありがちですが、すべての真実が明かされる訳ではありません。しっかりと理解するためには考察をする必要があるでしょう。
ほぼ全ての登場人物が、人外 or 醜悪 or 壊れているので感情移入はしづらい。
ですが、ストーリー展開には、続きが気になり読ませる力があります。
定価が 3,960円 の商品にもかかわらず、フルプライス作品並のボリュームがあり、すべての登場人物がフルボイス。コスパは最上級ですよ。
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陵辱、リョナ、エログロ、オカルト、カニバリズム、伝奇モノ、考察要素などの単語にピンときた人ならば楽しめるはず。
本作の特徴
ネタバレの有無
少しだけネタバレあり。
システム面がイマイチ
本作の唯一の欠点は、システム面が酷いこと。
Unity製 なんですが、オートモードの速度調整なし。横書きにも拘わらず「はい・いいえ」の配置が逆。タイトル画面まで戻らないと、ゲームを終了するボタンがない。エッチシーンは手動で男性ボイスを OFF にする必要がある。
七草姉妹のエッチシーンでは、男性ボイスを OFF にしたはずが、モブ男性の声が貫通してきました。
そこだけでもいいから修正してほしい。
主要キャラが魅力的
イカれたメンバーを紹介するぜ!
感情移入させる気ゼロ。主人公にも拘わらず、人間的な価値観を持ち合わせておらず、優れた「商品」として生み出された 俺TUEEE系 主人公。重火器をもった何千人もの兵士に囲まれるぐらいじゃないと倒すことができないぞ。
主人公と婚姻を結ぶことになるメインヒロイン。主人公ラブで、主人公に対してだけは情緒がおかしくなり、暴走したり、変な発言をしたり、はぁはぁしたり、さわさわしたり、スーハーしたり、ペロペロしてしまうヤバい子。ともすれば、キモくなりかねない性格ですが、絶妙に可愛くて最高です。
主人公にたいして「ぞっこん・ラブ(死語)」な謎多き少女。全く相手にされていないにも拘わらず、たびたび「久朗はボクのもの」と主張する姿は健気にすら映る。が、勝手に恋人だと主張するヤバいやつでもある。顔も声も完璧にかわいい。
特殊な構成
オカルト雑誌の記者が、情報提供者から「コトリバコ」の伝承について取材をするという形式で進行します。
最初に語られたのは、コトリバコの発祥のお話。時系列でいうと、いちばん古い時代のお話です。
つぎに語られたのは、メインとなる「七童村」を舞台にしたお話。
コトリバコが使われるまでの穏やかな日常を描いた序盤。七童村から離れたところで過ごす中盤。七童村にもどって目的のために行動する終盤。3幕構成となっております。
ヒロインとの交流を描いた穏やかな日常から、狂気と惨劇にまみれた刺激的なストーリーまで、物語の進行度合いによって、本作にたいする印象が変わるでしょう。
印象に残ったシーン
ネタバレの有無
ネタバレあり。既プレイ者向け。
叶子と2人でお買い物に行くシーン、縁側で語り合うシーン、キスをするシーンと、序盤のシーンの全てをニヤニヤしながら楽しんでいましたね。コトリバコが登場してから急転直下の展開になり、心のなかで発狂しました。
エッチシーンはいつ来るんだ? 早くエッチシーンが見たい! っていう私の願いは儚くも散ることに。
強気の女を屈服させるという、私の性癖にぶっ刺さるシーンがいきなりぶっ込まれて大歓喜。
やっとたどり着いたまともなエッチシーン。自分のことを「塵芥まんこ」と卑下する希がエロくてエロくて……。
尻フェチとしてもイチオシのシーンです。
これホンマに好き。
希の気持ちを思うと悲しいシーンですが、不憫な女の子の姿に萌えてしまう自分もいるという……。
ふたたび叶子に会えて本当に嬉しかったです。彼女はずっと辛そうに苦しそうにしていたからこそ、また笑顔になってくれたことが嬉しかった。2人の初エッチシーンの雰囲気の良さも大好きですね。
人妻寝取りモノっぽい展開で興奮しました。
たいした悪人でもないキャラクターが嬲られるのは可哀想ではあるのですが、女の子がひどい目に遭うシチュエーションが好きなんですよ。男に媚びたり、命乞いをするシーンが最高でした。そう考えると、この作品のエッチシーンのほとんどが、私の性癖にドンピシャだったんですよね。
いろんな感想記事で語ってきたのですが、私は「生き様」だけでなく「死に様」を重要視しています。
七草燈華ちゃんは最期には、思うがままに行動して、幸せそうに散っていったのが印象的でした。
九領希は、コトリバコによって生みだされた存在です。彼女の見た目は四季透子を模したもの。彼女の久朗にたいする好意は、四季叶子に影響をうけたもの。
真実を知った希は絶望します。自分の心も体も模造品だったからです。しかし彼女は、たった1つの自分だけが手にしたものを知覚しました。それは「久朗の1番に成り損なった」という事実。
もしかしたら久朗に愛してもらえたかもしれないという立場は、希だからこそ獲得できたもの。信じられるものを得た彼女は、自分の子袋を久朗に差し出します。「またね」とお別れの挨拶を告げて。
先ほど申し上げたとおり、死に様を重視する私にとっては、最高の〆方でした。
本作では、無条件に信じられるもの、縁となるものを大事にしている人物はみな幸せそうに死んでいます。
久朗は叶子にたいする愛をつらぬき、人間ではなく化け物として死ぬ。
叶子は最期に、久朗に幸せであったと告げます。
まどかは、一蔵の女としての役割を全うして死にます。
希は、自分が手にした確かなものを大事にしながら死にます。
うってかわって、窮地に陥ったときに態度がかわり命乞いをはじめた人や、信じられる相手がいなかった人は無惨な結末を迎えていますね。
考察という名の妄想
ネタバレの有無
ネタバレあり。既プレイであることが前提。
当方、クリアしたのが1ヵ月以上まえなので、プレイ時のメモとスクショを参考にして見解を書いています。もし、しっかりとした考察をされている方がいましたら、ぜひともその内容をご教示ください。
気になったポイントを列挙
謎の異邦人
- 島にコトリバコを持ち込む
- 本土で、高貴な方々(領主たち)を襲った
- 口の動きと聞こえる言葉が全く一致しない
- すぐさま自分の代わりの死体を用意していた
- 最後は、コトリバコに8つの子袋を詰め込み、黒いものに包まれて消滅
八坂依桜
- 顔の見える立ち絵がない
- 姿形を変えることができる
- 幼少期の久朗の父親殺しをほめた
- 首を斬って死んだはずが、依桜の名義で入院費用が支払われていた
- 代替の腸を用意していたりと、コトリバコを使われたあとの用意が周到
- 死ぬことを想定しているかのように、七草燈華にお墓の場所を教えていた
- 依桜にとっての久朗は、自分の「全て」であり、自分の「子供」でもある
- 「人の心の中身には自信がない」という発言
- 「神仏にだって、わからないことはあるさ」という発言
- 依桜が首を斬ったときに放った、久朗にたいする情念の深さ
- 化け物として生まれた久朗を、最高傑作の“人間”として完成させたかった
- 黒い何かから逃げている二荒劉誠が「依桜が首を斬ったときの笑い声」を聞く
取材関連の情報
- 九領家はとうの昔に断絶していた
- 記者の曾お祖母さんの旧姓は九領
- 取材を受けていた女の母親は九領希と同じ制服姿
- 記者にコトリバコを渡す
センと千
違う時代を生きていたセンと千は、似たような見た目なうえに病弱。
妄想
九領家が生みだした、悪夢と怨念の物語
まず、コトリバコの性質ですが、子供と、子供を産める女を殺すもの。
そして昔は、跡取りを産めない石女には価値がないとされていました。つまり、このコトリバコは、子供を産めない女、あるいは産めない体になってしまった女が、復讐のために作りだしたのが始まりなんじゃないかと考えました。
コトリバコから生みだされたモノは、不老不死の人外である可能性がたかい。理由は、死んだはずの九領希が最後に、以前とまったく変わらない見た目で出てきたからです。取材をうけていたのが久朗と叶子がつくった子供。その子の母親が九領希だと思います。
つぎに【贄の匣庭】というタイトルについて。贄は、神に供える捧げもののこと。箱庭は、箱のなかに作られた模擬的な世界のこと。匣という漢字が使われたのはコトリバコの形状からだと思います。
コトリバコを取り巻き、繰り広げられた惨劇は、神の手のひらの上の遊興だとでも言うのでしょうか。
異邦人と八坂依桜は、神か、コトリバコから生みだされた存在だと思います。
私が考えた妄想ストーリーはこうです。
なんらかの理由があって九領家が滅びます。九領家の仇を討とうとした異邦人は、高貴な方々に歯向かったあげくに捕まってしまう。船で護送されている最中に難破して、贄島にたどりつきます。あとは作中の出来事のとおり。コトリバコに8つ目の子袋をつめこみ、亡くなってしまった九領のお嬢さんと瓜二つの人物を生みだしました。生みだされた存在は八坂依桜を名乗ります。
依桜は生みだされたときに、人間の醜さを嫌っていた異邦人の気持ちが込められたのかもしれません。
依桜は、優れた人間を作ろうと躍起になります。実験を繰り返したすえに出来たのが八坂久朗。
久朗の体は「完璧」な出来栄えでした。しかし、久朗のことを最高傑作の“人間”にするためには何かが足りません。
どうしようかと考えていたときに、四季叶子がやってきます。叶子は、久朗を私にくださいと言ってきました。ただ純粋な愛を久朗に向けていたのです。だからこそ依桜は、託すことにしました。彼女なら久朗を人間にしてくるかもしれないと。
しかし、七童村には七名家という腐った血が溜まっています。久朗が悪影響を受けてしまうかもしれない要因は、排除しなければなりません。そこで依桜は、二荒透子に変装をしてコトリバコを持ち出し、二荒劉誠に渡します。叶子を助けるための準備も怠りません。そうして、七名家の崩壊への道筋を準備したのです。
コトリバコから生まれた少女には、九領の姓を与えました。依桜は、九領家の復活もまた目的の1つだったからです。
……という妄想を繰り広げながら読んでいました。
神である依桜が、人間たちの醜い争いを楽しんでいただけではないのか。久朗と叶子に、コトリバコを使って子作りをさせ、完全無欠なパーフェクトヒューマンを作り出したかったのではないのか。さまざまなパターンも考えました。
民俗資料編纂院のトップは、八坂依桜か異邦人なんじゃないでしょうか。最後に匣を回収したのは、この組織でしたからね。
最後に二荒劉誠が黒い影に追われていたのは、滅ぼすはずだった七名家の人間が、島外に逃げ出そうとしから依桜が手を下すことにした。あるいは、コトリバコの呪いを受けたのですかね。いくら考えても分かりません。
頭のなかで妄想を繰り広げてストーリーを繋げていたものの、引っかかる点はいくつもあるんですよ。
四季透子・四季叶子の母親は、どういう存在なんか。よほど見目麗しかったようで、何か裏があるんじゃないかと思っています。
けっきょく、センと千の見た目が似ていたことに意味はあるのか。コトリバコの呪いが影響しているのか。
細部まで考えていると、私の妄想ストーリーが破綻してくるんですよね。笑
何時間もウンウン唸りながら考えたけれど、答えが分かりませんでした。
何時間も悩むぐらいなら、2周目をプレイしろって話ですけどね。
まとめ
ココがイマイチ
- システム面が不便
ココがおすすめ
- リョナ・陵辱が好きなら実用性がある
- 続きが気になり読ませる文章
- 狂っているキャラクターたち
- コスパに優れている
おもしろかったです。
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