19,160文字
――ここは、変態の流刑地
ヘンタイ・プリズン(Qruppo) | |
ジャンル ―― 露出狂のプリズン脱獄ADV | |
発売日 ―― 2022年01月28日 | |
パッケージ版価格 ―― 9,800円(税抜) ダウンロード版価格 ―― 9,680円(税込) | |
評価
評価 | おすすめ度 |
★★★★★ | |
満足度 | |
作品の紹介
2018年に彗星のごとくあらわれて、【ぬきたし】というイカれた作品を発売して、飛躍的に知名度をあげた「狂ッポー」もとい「Qruppo」というエロゲメーカーをご存知でしょうか。
不気味な表情の鳥がマスコットキャラクターです。この鳥がTwitterで「ハメ...」とつぶやいただけで、約1,000リツイートされたことに人生の無情さを感じた人も多いでしょう。
作品の素晴らしさもさることながら、広報展開のうまさが光るメーカーなのです。
一世を風靡したQruppoですが、ぬきたし以外の世界観じゃ面白い作品は作れないだろうと訝しんでいた人もいたでしょう。
しかし以前よりも、ますますクオリティが高い作品をつくりあげました。
このメーカーは“ホンモノ”かもしれません。
ということで今回は【ヘンタイ・プリズン】を紹介します。公式略称は【ヘンプリ】です。期待したとおりの良作でしたよ!
どんな人向け?
- Qruppoの過去作【ぬきたし】が好きな人
- 体験版を楽しめた人
- 有名作・人気作は押さえておきたい人
- ヘヴィなシリアス展開のある重厚なストーリーを求めている人
- パロディや小ネタが満載の笑える楽しいエロゲを求めている人
攻略情報など
プレイ時間
私のプレイ時間は、ボイスをしっかりと聞いて50時間ほどです。最初のエッチシーンまでは11時間ぐらいかかりました。
攻略情報
誰のルートに入るのか選択するだけなので、攻略サイトは必要ないでしょう。推奨攻略順は『 千咲都 → 妙花 → ノア → グランドルート 』です。各ルートクリア後には、おまけシナリオが追加されますので、タイトル画面の「SCENARIOS」から追加されたルートをプレイしましょう。グランドルートのアフターは最後にプレイしてください。
システム
難易度 | 修正パッチ | シーンジャンプ機能 |
簡単 | あり | あり |
備考 | ||
※誤検知されてインストールできない方は、公式サイトをご参照ください。 |
感想
どんなお話?
地面を踏みしめるたび、イチモツが顔を振った。
全裸で走ったことのある人間は、誰もが知っているだろう。
男根が太ももに叩きつけられる音と、コンクリートを蹴る音が、夜の街に反響する。
それはでんでん太鼓の如く、吹雪を招来していた。
上記のテキストは、ゲーム開始時のものです。一文目から惹きつけられるテキストは、さすがのQruppoと言えます。
何が起こっているかというと……
主人公の「湊 柊一郎(みなと しゅういちろう)」は、吹雪く街なかを全裸で走っていました。どうやら警察官から逃げていたようです。
とうぜん逃げ切れるわけもなく、捕まってしまうことに……。「公然わいせつ罪」および「公務執行妨害」で逮捕されます。
法廷で「これは変態的露出ではなく、自己表現です」と自己弁護をするも、聞き入れてもらえずに、懲役10年に処されます。
――懲役10年です。
本来であれば露出は、「6ヵ月以下の懲役」や「30万円以下の罰金」であるために、あきらかにオカシイ求刑年数でしょう。しかし、なんらかの力が働き、絶海の孤島にある「チューリップ・プリズン」と呼ばれる監獄に収監されることになりました。
チューリップ・プリズンは、「更生不能」の烙印をおされた性犯罪者……「HENTAI懲役」を矯正するための施設です。
たとえば「女児の座ったブランコを1,000個以上盗んだ男」通称「ブランコすりの金さん」などなど、さまざまなHENTAI懲役が投獄されています。
この施設では、囚人にたいする暴力的な措置が許されており、理不尽なほどに厳しい規則で縛られています。
また、「どのような変態的な罪で捕まったのか」というHENTAI懲役どもの「格」や「ヒエラルキー」もあり、囚人同士での争いやイジメも横行しているのです。
主人公の柊一郎は、このような過酷な環境でどのように過ごしていくのか。
なぜ彼は露出を繰り返していたのか。自分の犯した罪にどうのように向き合っていくのか。
監獄で出会った他の囚人と、どのように関わりあい、どういう関係を築きあげるのか。
上記の3点が、この作品のストーリーを楽しむ肝だと思います。
ヒロインを紹介
メインヒロインはこの3人!
主人公と同じ「囚人」の立場です。
「爆弾魔」「盗撮魔」「ヤクザの組長」と、個性ゆたかな面々がそろっています。
あっ……ヤメてください、帰らないでください、このページを閉じないでください。大丈夫です。あまり惹かれる属性ではないかもしれませんが、ちゃんと可愛らしくて魅力的なヒロインたちですから。笑
主人公とは敵対(?)する立場にある「看守長」であるサブヒロインの3人!
専用のルートはありませんが、メインヒロインにつぐ重要人物です。
ヘンプリの特徴
圧倒的な物量のパロディ
本作の特徴は、なんといってもその圧倒的な量のパロディじゃないでしょうか。
ゲーム、アニメ、マンガ、ドラマ、邦画、洋画、時事ネタ、ネットスラング etc……。
ぜんぶ拾える人はいないんじゃないかと思えるぐらいにネタの宝庫です。
エロゲでは、パロディを取りいれている作品は沢山あります。
それが面白いかと問われれば、首をかしげたくなるものも多い。
しかしQruppoの作品は、純粋にネタとして面白くなっているのが特徴です。
ストーリー展開は、他作品の展開をオマージュしている場合もあり、オリジナリティに欠けるとみる向きがあるでしょう。
しかしその闇鍋のごとく大量につめこまれた調和のとれない食材をまとめあげ、味のいい料理として仕上げる手腕が素晴らしい。
ワタシ、ジャパニーズカルチャー、ワカリマセーンという金髪碧眼のあなた!
安心してください。
あまり元ネタが分からなくても楽しめる作品でしょうから。
たとえば元ネタである「宇宙猫」の画像をみたことがない人でも、それをパロった画像がイイ感じのタイミングででてくるので、なんとなくでも笑えてしまうのです。
シリアスな展開
ヘンタイ・プリズンは、昔なつかしの作風を「今風」に仕上げているように感じました。
近年では、ユーザーは「ストレスに弱い」だとか「短くてサクッとプレイできるゲームが好き」だとか言われています。
しかしヘンプリはその真逆!
重苦しいシリアス展開が用意されていますし、プレイ時間も他作品の平均よりも長いです。しっかりとボイスを聞いて50時間かかりました。
先ほど「今風」と書きましたが、それは「飽きられないような工夫」を強く意識している部分にあります。
ネタやパロディを散りばめたり、ときおりギャグシーンを挟んだり、先の気になるストーリー展開を用意したり、立ち絵を動かして視覚的に飽きられないようにしているのです。
【進撃の巨人】なんかもそうですが、いくらヘヴィな展開があろうとも面白ければヒットします。重厚なシリアスストーリーを求めているユーザーは潜在的に多いでしょう。周りがやっていないことをやれば1人勝ちできます。
だからこそQruppoは、エロゲ業界のトップメーカーに躍りでたんじゃないでしょうか。
もちろん「シリアス展開がきつくて〇〇ルートをスキップした」みたいな書き込みも目にしたので、か弱い子猫ちゃんが存在するのも確かでしょう。しかしヘンプリは、「売れている」「ウケている」という事実があるので、この手の作品の需要は高いと思うのです。
エロゲであることの意義
最初からコンシューマー化することを前提につくっているエロゲも多々みられる世の中ですが、ヘンタイ・プリズンはそんな日和ったことはしていない。
エロゲだからこその作品を作っていました。下ネタ満載のテキストも、HENTAI懲役のかかえる業や葛藤も、エッチシーンで深まる関係性もきちんと表現されています。
作中で主人公らがエロゲ制作をするシーンがあるのですが、柊一郎は「エロゲで表現したいこと」という部分にこだわっていました。
数多のモブキャラ
Qruppo作品の特徴として、立ち絵のないモブキャラが大量にでてくることが挙げられます。
本作のモブキャラには「二つ名」が付いています。
全国各地の道や壁に無修正イラストを描きまくり逮捕された「バンプッシー」
他人の汚物を楽器にいれて吸うのが好きな「スカトロンボーン」
トートロジーを用いて喋る謎のジジイ「トートロ爺」
などなど、濃すぎるモブが多すぎて枚挙に暇がありません。
システム面について
ゲームエンジンが「椎名里緒」から「Artemis Engine」にかわって、ついに「バックログ画面からのシーンジャンプ機能」が搭載されました。
他にも「お気に入りボイス登録機能」もあります。全体的にシステム面は改良されていました。
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しかし、右クリックしたときやバックログ画面を開いたときにボイスが停止してしまうのはいただけません。
ボイスを全部聞く派としては、ボイスを聞きながらテキストウィンドウを消して絵を眺めたいのです。
演出について
エロゲは基本的には、プレイヤーのペースで読みすすめるコンテンツです。
しかし、制作者の意図したペースに巻き込むこともできます。
手法としては、「ムービー」「オート演出」「BGV再生」等があります。
ヘンプリでは、ボイスをバックグラウンド再生することによって、裏でヒロイン同士が会話をしていたり、愚痴をつぶやいているように見せています。
今までもこういった手法を取り入れているエロゲはありましたが、ここまで多様されているケースは初めてかもしれません。
上手く機能している部分もあったのですが、ボイスを聞きとれずに何度もバックログ画面をひらいてテキストを確認した人もいるでしょう。バランスが取れれば、今以上に素晴らしいものになったんだろうと思います。
その他、立ち絵もしっかりと動かしていましたし、後半にはテンションの上がる演出も用意されていました。
ぬきたしシリーズとの関連性は!?
【ぬきたし】とは、Qruppoの過去作である【抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?】のことです。
ぬきたしシリーズとのつながり
Q:ぬきたしシリーズはプレイするべきでしょうか?
A:プレイしなくても楽しめます。
ヘンタイ・プリズンからのプレイでも大丈夫です。しかしヘンタイ・プリズンは、ぬきたしシリーズと世界観がつながっていますし、共通のキャラがでてきたり、過去作のネタがちらほらと仕込まれています。ぬきたし既プレイ者向けのファンサービスもあります。
ぬきたしをプレイするつもりがあるなら、先にやっておいたほうがいいです。
ビッチなんかに絶対負けたりしないスタイリッシュ逃亡&バトルADV
ぬきたしが合わなかった人へ
Q:ぬきたしが合わなかったのですが、ヘンタイ・プリズンは楽しめるでしょうか?
A:楽しめる可能性はあります。
ぬきたしの舞台は、そこかしこでドスケベ変態セックスが繰りひろげられているイカレ☆ポンチな島です。ノリに付いていけない人もいたかもしれません。
しかし本作では、シリアスなシーンの割合が増えていますので、「ぬきたしは楽しめなかったけどヘンプリは楽しめた」という感想をちらほら見かけました。
逆にいうと、ぬきたしのようなノリを期待していた人で、ヘンプリがあまり楽しめなかった人もいたみたいです。
不安ならば体験版をプレイしましょう。
事前知識
Q:ぬきたしは未プレイですが、事前に知っておいたほうがいい知識はありますか?
A:とくにありません。
強いていうならば……
- ぬきたしは、変態セックスが推奨されていた「青藍島」という狂った島が舞台
- 意味深なキャラの描写があったら、ぬきたしの登場人物だと思っておけばいい
- Qruppoのライターは、アナルを四次元ポケットだと思っている
この3点を抑えておけばオーケーです。
対比
Q:ぬきたしとヘンプリはどのように違うのでしょうか?
A:いろいろと対比構造になっています。
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? | ヘンタイ・プリズン | |
ドスケベセックスが推奨されている島が舞台 | ⇔ | ヘンタイ行為が禁止されている監獄が舞台 |
島の県知事は爺 | ⇔ | 監獄の所長は婆 |
夏 | ⇔ | 冬 |
明るい色合い | ⇔ | 暗い色合い |
主人公が肉体派 | ⇔ | 主人公が頭脳派 |
主人公には妹がいる | ⇔ | 主人公には姉がいる |
主人公は陰茎を隠したがる | ⇔ | 主人公は陰茎を見せたがる |
主人公の陰茎は“武器” | ⇔ | 主人公は陰茎と“友達” |
オナホは“芸術” | ⇔ | 露出は“芸術” |
共存 | ⇔ | 自己表現 |
エッチシーンについて
※本作のエッチシーンは、ストーリー上重要なものもありますし、ギャグを織り交ぜていて面白いです。 存在するか分かりませんが、普段エッチシーンをスキップするタイプの人間も読むことをおすすめします。
卑語あり。ピー音なし。陰毛あり。アナルモザイクなし。
ギャグシーンを入れたことにより実用性は下がっていました。
実用性に関していえば、過去作の【ぬきたし2】のほうが断然上です。
エッチシーンのギャグに関しては、時おり入れているライターもいるんですよ。実用性を阻害しないように上手く入れこんでいる人もいます。
盛り上がりだしたところで冷水をブッかけるように入れずに、最初やフィニッシュ後に入れるなど、もうちょっとギャグと実用性のバランスを取っていただけると嬉しいです。
基本的には好印象なんですよ。不自然な巨乳ばかりではないですし、陰毛が生えているヒロインもいますし、エッチシーンも手を抜かないで作られていますから……。エッチシーンにおけるイチャイチャ描写も過不足ないです。
コダワリを感じるシーンもありました。
話は変わりますが、ノアちゃんのチュパ音には落胆しました。
たとえば「チュパッ、チュパッ、ジュルルル」みたいなテキスト描写のところを「んっ、んっ、んんっ」みたいに読み上げていたからです。上手い下手以前に、チュパ音という概念が存在しませんでした。00年代にはそういうタイプの声優さんもいらっしゃいましたが、近年では見かけなかったのでビックリしました。
いや、文月弌さんのお声は可愛らしくて好きなんですよ。めちゃ好きと言っても過言ではありません。
ノアが1番好きなヒロインだったからこそ落胆したのです。
3Pがあったのはマジで最高でしたけどね。
そして最後に一言ケツ論を。
ケツ成分が足りなすぎる (´;ω;`)
多分それさえ満たしてくれれば絶賛していました。笑
ネタバレ感想
ネタバレなしには語れないことを詰め込みました。
「パロディについて」「演出について」「何を伝えたかったのか」「好きな〇〇」などを紹介しています。
まとめ
ココがイマイチ
- シリアスな展開が合わない人もいるみたい
- 右クリックでボイスが止まる
- エッチシーンの実用性
- ヒロインからのお前呼び
ココがおすすめ
- クリックする手が止まらなくなるストーリー展開
- 小ネタやパロディが多彩で笑えるテキスト
- ジーンとくるシーンがあった
- 大ボリュームで満足感が高い
- 多くのキャラに愛着がわく
- エロゲならではの作品
- ハーレム展開
- ノアが可愛い
完成度の高い大作でした。
辛く苦しい展開をのりこえた先にあるカタルシスや幸福感は、言葉にできないものがあります。
ぬきたしを楽しめた人は、ヘンプリも楽しめる可能性が高いでしょう。ぬきたし未プレイ者でも、体験版を楽しめた人や、重いシリアス展開が大丈夫な人ならプレイしてもらいたいですね。
ダウンロード版
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