【何度目かのはじめまして】のメインビジュアル

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【何度目かのはじめまして】の感想

古城

5,499文字

繰り返して、繰り返して、繰り返して。
  その因果は少女を救うか、それとも――

何度目かのはじめましてPurple software
【何度目かのはじめまして】のパッケージイラストゲーム属性:シナリオゲー
ジャンル ―― 繰り返す運命の中で君を見つけるADV
発売日  ―― 2025年09月26日
パッケージ版価格  ―― 5,800円(税込6,380円)
ダウンロード版価格 ―― 5,800円(税込6,380円)
スタッフ
シナリオさかき傘
原画
主題歌 ―― Re:何度目かのはじめまして(Vo. 紫咲ほたる)
あらすじ

空虚な毎日を生きる主人公、喜納夢斗。
中途半端な大学を卒業し、
中途半端な企業に就職し、
中途半端な日々に、なにか足りない気がしていた。

だがそんな日常は、ラプラスという名の魔に触れたことで
全てが奪い去られる。
気がつけば夢斗は13年前に戻っていた。
見知った友人、見知った学園、見知った生活。

「この世界を書き直せば、俺の人生も何か変わるんじゃ……?」

懐かしくも楽しい学生の日々を謳歌する夢斗。
だがそこには、記憶にはない少女が紛れ込んでいて……。

――公式サイトより引用

評価

評価おすすめ度
【何度目かのはじめまして】の評価★★★★★
満足度
満足度83点

作品の紹介

今回は【何度目かのはじめまして】をご紹介します。

何度目かのはじめまして……というタイトルを見て何を思い浮かべるでしょうか。

私は、声優の石田彰さんのエピソードを思い出します。新人声優が挨拶に来たときに、石田彰さんが「覚えられないから挨拶に来なくていいよ」と言ったエピソードです。新人声優にとっては、石田彰さんとの再会は“何度目かのはじめまして”なんでしょうね。

石田彰さん

……あれ、どうしてこんな話をしているんだっけ?

何度目かのはじめましては、飽きることなくサクサク読み進めることのできる、非常に楽しい作品でした。

【何度目かのはじめまして】のパッケージ画像

私が所持しているのはパッケージ版です。

どんな人向け?

  • アラサーのエロゲーマー
  • 美麗なイラストに惹かれた人
  • ループ&タイムリープ作品が好きな人
  • 声優の柳ひとみさんのボイスを堪能したい人
  • ヒロインの「年上」である一面と「年下」である一面が見たい人

攻略情報など

プレイ時間

私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて9時間ほどです。最初のエッチシーンまで1時間半ぐらいかかりました。

 

攻略情報

いくつか選択肢はありますが自力攻略は容易です。

 

システム

難易度修正パッチバックログジャンプ
普通ありあり
備考

感想

どんなお話?

全員死なねえかな、ここにいる俺以外の全員。

画像を見てほしい。主人公とは思えない物言いである。

本作の主人公=喜納夢斗きのうゆめとは、アラサーの会社員で、伸び切ったゴムのように弾力のない毎日を過ごしています。覇気のない表情、濁った目、社会にたいする呪詛の言葉……。

古城
これワシやないかーい!!!

きらきら輝く学生の主人公も大好きですが、社会人の主人公こそ共感できますね。

それではストーリー展開の説明に戻りましょうか。主人公の母親が、実家から要らないものをダンボール詰めにして送ってきます。そのなかに入っていた腕輪をつけると、不思議な生物があらわれました。

ラプラ「この宇宙の情報集合構成体、ラプラスが個体概念として形象化したものだ」

全宇宙のあらゆる情報を観測する概念のことを「ラプラス」と言いますが、ラプラスに情報をとどけるための個体こそがこの猫ちゃん ―― ラプラと名乗る存在なのでした。

全知の鉄

ラプラと取り引きすることなり、主人公の血液と情報をあたえることに。

その代わりに、主人公が人生で1番幸せだった時間を追体験させてくれるそうです。具体的にいうと 13 年まえにタイムリープさせてくれるとのこと。期間は1週間です。

………………

…………

……

翠「ごめん。驚かせたよね」

タイムリープしてみたら、記憶にない女の子に話しかけられました。

彼女は本作のヒロイン=蝶舞翠ちょうまいすいです。歴史文学研究部の部長をやっていて、古語ラテン語で書かれた「黒魔術」に関する書籍の翻訳作業にハマっています。

そして、どうやら主人公は彼女と仲が良かったらしい。記憶にないけれど。

本作は、記憶の謎を解くために、とある目的を叶えるために、学生時代の1週間をループする作品です。

本作の特徴

タイムリープする楽しさがある

ミマサカ「んでさんでさあ、ノコノコ動画のMADでまた面白いの見つけてさ」

懐かしかったあの頃の話題、現在と過去の違い、大人と子供の感性の違いなどなど、タイムリープしたときの感覚が、テキスト描写により伝わってきました。

翠「そっか。何か足りないと思ったら、子供っぽさが足りないんだね、いまの君には」

展開によっては主人公は、13 年後からタイムリープしてきたことを打ち明けます。大人びているように感じた翠先輩が、30 歳のおっさんからしたら子供っぽく見えるという感覚の逆転現象がめちゃくちゃ面白かった。

私は、本作のライターであるさかき傘さんの過去作の感想で「属性転換が上手い」と絶賛しました。属性転換とは私が作った造語で、「あるときを境にヒロインの見え方が変わる」ことを指します。たとえば、意地悪なおばさんが兄と接しているときには「妹」としての顔をのぞかせる ―― これまでの印象とは大きく異なる姿を見せてくれたときに生じる脳の混乱を、属性転換という言葉をもちいて称賛したのです。

本作では、翠先輩の「先輩としての顔」と「年下としての顔」のどちらも味わえるのが最高ですぜ。

そして、声優の柳ひとみさんのお声が可愛らしい。

 

ノベルゲームとしての面白さが追求されている

【何度目かのはじめまして】の選択肢の例

テキストウィンドウは、まるでノートの罫線のように区切られている。各種メニューは、ノートに付箋を貼っているようなデザインである。バックログ画面をひらいたときに「ビラッ」とノートをめくるような音が鳴る。デザインの統一感が心地よい作品でした。

選択肢を選ぶ楽しさもあり、意外な選択が攻略の糸口になっている点も面白かったですね。エンディングでは印象的なバッドエンドも用意されており、ノベルゲームならではの魅力を感じました。

また、ヒロインの住む団地では、夕方になるとチャイムが鳴るのですが、スピーカーが壊れていて不気味な音がすると語られていました。その後、実際にチャイムが流れるシーンがあるのですが……

想像した 10 倍ぐらい怖い音でゾワッとしましたよ。笑

 

イラストが素晴らしい

原画家である先生のイラストがあまりにも素晴らしい。

夢斗くんと翠先輩が仲良く寄り添っているCG

めちゃくちゃ雰囲気が良いと思いませんか?

最高のイラストが来るたびに「あああああ!」と思わずデカい声をあげてしまいました。

夢斗くんと翠先輩のツーショット写真

1番凄いと思ったのは、上の画像のイラストです。主人公とヒロインのツーショット写真なのですが、ストーリー上でのこの写真の使い方がバツグンに上手かった。この写真が登場するたびに愛着が増していくのが凄いです。

【何度目かのはじめまして】の特典「蝶舞翠、思い出のチェキ」

しかも、この写真を予約特典として付属してくれたのが嬉しかったですね。

エッチシーンについて

卑語あり。ピー音あり。アナルモザイクなし。

 

翠先輩のマン汁をスプーンで掬う

イラストはエロい。しかし、画像のようにストーリー上必要なサービスシーンが1シーンとしてカウントされていることもしばしば。そのうえ卑語がない。あってもピー音が付いているため実用性はそこまでありません。

翠先輩の陥没乳首

ヒロインは、爆乳のうえに陥没乳首であり私の好みからは大きく外れていました。しかし表情は可愛いですし、ムチムチの肉感はエロいんですよ。

翠(だめ……夢斗くん……そこお尻の、お尻の……)

さかき傘さんのエロゲといえば「アナル」と「3P」は付き物なのですが、どちらも変化球的にブッ込まれていて笑いました。どちらのシチュエーションも大好きなので嬉しかったですね。しかも、変化球的なHシーンがストーリー上必要なものであるというのが凄いところ。詳しくはネタバレ感想にて語ります。

克さんのフェチ的なこだわりが素晴らしく、フェラしたあとにヒロインの口元に陰毛が付いているイラストがドチャクソエロかったですね。

ネタバレ感想

他の人が着目していないであろう部分について語ります。

ネタバレあり(クリックで展開)

 

翠先輩がとにかく可愛くて、彼女の抱く「忘れないでほしい」という想いが切なく、胸を打ちました。夢斗くんと翠先輩のラブストーリーとしての完成度は、もはや私が語るまでもないでしょう。

写真を見て涙を流す翠先輩

この歌が好きって気持ちだけは、いつまでも消えることはなかった。

夢斗に関する直接的な記憶は失われてしまっても、彼との思い出である「歌」を好きでいる気持ちだけは消えなかった ── その構成が本当に美しかったです。

・・・

この作品にはエピローグが用意されています。プレイヤーのなかには蛇足だと思った人もいるみたいですね。エピローグは必要だったのか。そのことについてお話しましょうか。

本作は、ストーリーを楽しむという観点では、グッドエンドやバッドエンドなど複数の結末が用意されている作りですよね。ただ、ヒロインを攻略するという観点では、翠先輩のルート1本道のストーリーでした。

翠先輩を攻略すると同時に、サブヒロインとしてラプラも攻略しているのです。

ラプラ「そう。これは、人間どもがいう『面白そう』だ」

当初のラプラは、人間のことを「下等生物」だと言っており、情報を得る以上の価値は見出してはいませんでした。しかし主人公の奮闘により「面白そう」と興味を抱かせることに成功しています。

やっぱり人間て面白―――っ

ラプラ(翠先輩猫耳バージョン)の騎乗位

めちゃくちゃ痛がるラプラ

ラプラちゃんが可愛すぎる。

セックスは最大のコミュニケーションツールであると語る人もいるほどには、言葉を交わすだけでは伝わないことも伝わります。

ラプラ「女心の分からんボケナスめ」

ラプラの態度に変化の兆しを感じ取れるセリフがありました。それは「女心の分からんボケナスめ」というもの。人間のことを「ただ情報を得るためだけの下等生物だ」と思っていたら、女心を慮るような発言はしないはず。

ラプラ「なに、これまで預かった分の血液は返してあげるさ。一方的にもらうんじゃフェアじゃないからね」

ラプラ「幸福な旅を」

ラプラは、幼くして死ぬはずだった主人公のことを救済します。

大人になった夢斗と翠が再会

そして、大人になった夢斗くんと翠先輩が再会するエピローグ。パッケージイラストを彷彿とさせる構図が素晴らしい。

翠先輩との交流だけを描いた作品であれば、エピローグは必要なかったのかもしれません。 しかし本作では、ラプラという上位存在との交流も描かれており、その結果を含めてのエンディングとなる以上、エピローグの展開に収束しなければ不自然でしょう。

当初の私は「さかき傘さんの性癖である『3P』を無理やりブッ込むために、ラプラもヒロイン化したのでは?」思っていました。笑

ところが、すべてはエピローグへと綺麗に収束させるための構成だったのです。

いやはや、感服いたしました。ラプラはセックスを通じて、夢斗くんへの理解と愛着を深めていった。ストーリー上でも意味のある性行為であり、18 禁要素を物語に活かした“エロゲならでは”の作品だったと言えるでしょう。

主人公、ご両親、翠先輩の誰もが救われる結末として綺麗に〆ていましたね。

 

まとめ

ココがイマイチ

  • Hシーンの実用性が足りない
  • ピー音あり

 

 

ココがおすすめ

  • ループものとしてもタイムリープものとしても面白い
  • 柳ひとみさんのボイスに癒やされる
  • 続きの気になるストーリー展開
  • テキストに引き込まれる
  • 統一感のあるUI
  • イラストが綺麗

 

 

1秒たりとも飽きることのなかった良作。

イラストが綺麗であり、グイグイと引き込まれるテキストが素晴らしい。ミドルプライス作品で、短いながらも綺麗にまとまっており、ギュギュッと“良さ”の詰まっているエロゲでしたよ。

パッケージ版

ダウンロード版

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