6,800文字
地獄に最も近い場所。
| 鏖呪ノ嶼（CLOCKUP） | |
 |  |
| ジャンル ―― 呪術伝奇VN | |
| 発売日 ―― 2024年05月31日 | |
| パッケージ版価格 ―― 8,800円（税込9,680円） ダウンロード版価格 ―― 7,800円（税込8,580円） | |
評価
| 評価 | おすすめ度 |
 | ★★★★☆ |
| 満足度 | |
 |
作品の紹介
今回は【鏖呪ノ嶼】を紹介します。呪術を題材にした伝奇モノの作品です。
今では「呪術」という単語を Google 検索したら、某バトル漫画がズラーっと出てきて辟易しますよね。
例の作品とは丸っきり別モンです。
「オマンコ」と「オマーン湖」ぐらい別モンです。
「チンコ」と「パチンコ」ぐらい別モンです。
私が所持しているのはパッケージ版です。
どんな人向け？
- 呪術師
- 伝奇モノが好きな人
- イケオジが好きな人
- ダブル主人公作品が好きな人
- 痛みや苦しみを抱えながら生きている人
- エンタメ性よりも共感性を求めている人
攻略情報など
プレイ時間
私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて16時間ほどです。最初のエッチシーンまでは30分ぐらいかかりました。
攻略情報
２人の主人公のうち、どちらのエピソードを見るのか選択していくだけです。攻略サイトは必要ないでしょう。
推奨攻略順はありません。強いて言うなら、文鳴啾蔵のエンディングを最後にまわしたほうが後味がいいかも。
システム
| 難易度 | 修正パッチ | バックログジャンプ |
| 簡単 | あり | あり |
| 備考 | ||
感想
どんなお話？
本作は、ダブル主人公作品です。
主人公を簡潔にご紹介しましょう。50歳手前の文鳴啾蔵と、43歳の吐月完です。
おっさん２人にスポットライトを当てた異色の作品なのですよ。
ジャンルは伝奇モノ。離島が舞台です。伊勢地方に実在した売春島をモチーフにしています。つまり、田舎特有の因習がのこったクローズドサークルでの物語。「呪術師」である主役２人の因縁が交差するダークな雰囲気の作品です。
私は大好きなジャンルなのですが、大きく好みが分かれそう。
基本的に暗い雰囲気ですし、胸糞わるい展開がおおい。Ｈシーンは陵辱メインですし、奇跡や救いはありません。
呪術や呪詛をつかった戦闘シーンがあるのですが、呪の言葉を唱えるだけ。あるいは、呪詛返しの法文を唱えるだけ。
つまり、人によっては「バトルに爽快感が～」とか「ストーリーにカタルシスが～」などと文句を言うでしょうね。
それならば、この作品のどこに魅力があるのでしょうか。
………………
…………
……
それは、ネタバレになるので言えません。
このままではレビュー記事を公開した意味がありませんね。少しだけ内容に踏み込ませていただきます。
本作では、過去編もまじえてストーリーが進行します。
さて、画像を何枚かアップしましたが、２人の主人公の違いをなんとなく感じていただけたでしょうか。
文鳴啾蔵は、たった１つの執念を燃やしつづけて生きている男。
たいする吐月完は、過去のできごとを受けいれ、抱えこみ生きている男。
つまり、おっさん２人のそれぞれ別の方向性の「生き様」を追体験できるストーリーなのです。
あなたは、ユニコーンの『すばらしい日々』という楽曲をご存知でしょうか？
年齢を重ねるごとに、味わい深い印象になっていく素晴らしい楽曲です。
この曲の歌詞に「暗い話にばかり～やたら詳しくなったもんだ～」というフレーズがあるんですよ。
誰しも歳をとるにつれて、親しい人間を失ったり、辛い経験をしたりと、痛みや苦しみが増えていきます。
今回紹介している【鏖呪ノ嶼】は、たくさんの痛みや苦しみを抱えている人にこそプレイしていただきたい。
おっさんの抱える痛みや、醸しだす郷愁に共感できることこそが、本作の１番の魅力だと言えるでしょう。
まだあまり痛みを抱えていない人や、共感力の低い人や、エンタメ性のつよい作品を求めている人にはおすすめできません。
余談ですが、呪術と言ったら『東京レイヴンズ』を思いだしますわね。
オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ！
ヒロイン紹介
前の項目では主人公の紹介がメインとなりました。
おっさん主人公の生き様を楽しむ作品なのですから。
ヒロインの萌えだとか恋愛模様だとかを楽しむ作品ではありませんので。
しかし本作は、誰がなんと言おうと美少女ゲームです。美少女ヒロインの紹介もさせてくださいませ。
文鳴啾蔵編のヒロインである二ツ栗珠夜（CV：藤野むらさき）。顔よし声よし性格よしの美人さん。
背中に刺青のはいったイカツイ系のお姉さんの名前は火蛾偲（CV：葵時緒）。吐月完編のヒロインです。私はヒロインに求めているものは「可愛さ」なので、彼女はそれと真逆の属性でした。
が、お気に入りのヒロインなんですよ。
なぜなら、見た目に反して、可愛らしい一面のあるヒロインでしたから。
背中に入っている刺青は、反社会性をあらわしている訳ではありません。とある男から受けた呪いです。体を蝕まれることになった代償として、鬼に力を借りることができます。
吐月完編のサブヒロインであるカノ（CV：綿雨たべ子）。彼女は属性でいったらロリビッチです。サブヒロインとは言いつつ、メインヒロイン級のヒロイン力を持っていました。ビックリするぐらいに声が可愛いです。
え？ キービジュアルにはもう１人ヒロインがいるって？
その子はヒロインとしての活躍はありません。笑
鏖呪ノ嶼の特徴
現実世界とのリンク
現実世界に則った世界観をしています。
たとえば、吐月完の過去話にて「ノストラダムス」の話題が出てきて懐かしい気分になりました。年齢によってはご存じない方もいるでしょうか。ノストラダムスっていう傍迷惑なおっさんが、1999年に世界が滅ぶことを予言したんですよ。通称「ノストラダムスの大予言」。私も友人と「ノストラダムスの大予言って信じてる？」という会話をした記憶がありますね。
エロゲで何かの名称をだす場合、ボカしたり変更することが多いですが、本作ではそのまんま使用されています。
私は、隠す必要なんてないと思っていますので、ここまでストレートに名前をだされると見ていて気持ちがいい。
楽曲が素晴らしい
迫力のあるBGM。格好いいOP曲。そして、心にジーンと響くED曲。シナリオが良いだけでなく、楽曲による相乗効果により楽しいストーリー体験ができました。
オマケ要素
CLOCKUP作品ならではの、クリア後のスタッフコメントや、コンフィグ画面のテストボイスの録り下ろし音声があります。
エッチシーンについて
卑語あり。ピー音なし。アナルモザイクなし。
和姦もあるのですが、半数以上が陵辱や輪姦やリョナなど、女の子が悲惨な目にあうエッチシーンです。
若干人を選びそうなのが四肢切断。結構人を選びそうなのが蛭をつかったシーンでしょうか。
以下、グッときたエッチシーンを紹介します。
ロリビッチによる技術力のたかい奉仕シーンはめちゃくちゃエロかったです。
途中で「ああんっ、我慢しないでパパ♡ 娘のフェラチオで気持ちよくなって？ んれろっ、んちゅっ♡」と、父娘関係を彷彿とさせるイメージプレイを挟んできたのがエロかったですね。私の予想に反して、主人公のチンコはガン萎えして、すぐさまこのイメージプレイは中止になったんですけどね。笑
可哀想なシーンではあるのですが、美人な珠夜ちゃんが、おっさんに好き放題にオナホのように扱われているシーンもドチャクソ性癖に刺さりました。
いやいや、もちろん雰囲気のいい和姦シーンに、もっと尺を割いてくれても宜しかったんですのよ。
ネタバレ感想
作品の根幹をなす致命的なネタバレを含みます。
苦松刑部がキショすぎる
本作の最強の呪術師である苦松刑部。彼が登場するたびに、うわキショい、やめてと目を覆っていました。笑
終盤で生い立ちが語られたことにより、やっとこさ苦松刑部という人間のことを理解できたんですけどね。
それを加味してもキショい。
塔婆不二彦が格好いい
こんなにも美しい少女に出会ったら、そりゃあ一生を賭けてでも守っていきたいと思うのが男の性ってもんです。
苦松刑部により、脳を司る「上尸」を操られて、不二彦くんの心にひめていた本性があらわれてしまうシーン。
彼は性欲に支配されて、珠夜を襲うかと思いきや、それでもなお珠夜を守るために立ちあがります。
これが何を意味するのかというと、不二彦くんは心の底から、ただ珠夜を守護したいという一念を持っていたということ。
不二彦くんの心が呪術を凌駕したことを認めた刑部に「おまえの勝ちだ」とまで言わせたのは凄いです。
こんなに格好いい男がいるんですね。煩悩と性欲にまみれた私からしたら、想像だにしなかった心の在りようでした。
文鳴啾蔵のエンディング
現実の世界とリンクした世界観であることは前述したとおりですが、まさかそれが、ストーリーのクライマックスに活かされるとは思ってもみませんでしたね。
青沼シヅの呪いを、インターネットという薄く広い繋がりを介することによって分散させていく。田舎の因習と、長くつづいた怨念を、現代の利器によって破壊するという構図が、あまりにも爽快で気持ちがよかった。
幼少期から抱えていた執念を死ぬまでつらぬいて、いさぎよく散っていった文鳴啾蔵という男があまりにも格好いい。
私は「格好いい生き様」も好きなんですが「格好いい死に様」が何よりも大好物。全身全霊をささげて死んだ文鳴をみて心が震えました。
しかもよ？ しかもですよ？
あまりにも美しいエピローグが流れてきて、不覚にも目が潤んでしまったんですよ。
文鳴啾蔵が、こんなにも険がなくなった幸せそうな笑顔をみせてくれるとかズルすぎませんか。泣きますよこんなん。
しかもエンディング曲がこれまた、ずいぶんと美しいメロディなんですよね。
放心しながらエンドロールを眺めて、タイトル画面に戻ってからもしばらくボーっとしていました。
吐月完のエンディング
復讐を誓って以降、まっとうな青春をおくらずに、ずっと暗い道を歩みつづけていた火蛾偲。彼女が最後に吐月完とエッチをするシーンの雰囲気のよさがマジで大好きです。まるで、まだ普通の少女として生きていたあの頃に戻ったかのような、１人の可愛らしい女性としての姿がみられてグッときました。
彼女は、鬼の力にのみこまれることを承知で、吐月完を助けようとするんですよね。復讐の完遂よりも、彼を助けることを優先するのです。
まだ言いたいことがあるのですが、一旦ここでカノの話に移ります。
カノは、吐月完のことが好きだと言います。他の男たちは体が目当てで、いざとなったらカノのことを見捨ててきた。それにたいして吐月完だけは、カノに寄り添ってくれたからです。
カノは、吐月完の力になるために、青沼シヅに命を差しだす決断をしました。
復讐を果たすためだけに生きてきた火蛾偲は、吐月完を助けるために力をつかう。流されるままに生きてきたカノは、自分の意思のもとに決断をくだし命をなげだす。
ヒロイン２人とも生き方が変わっているんです。
吐月完は、大切なものを失いつづけた人生でした。結婚を考えるほどに大好きだったカノジョ――窓木希美は、陵辱・輪姦されたすえに自殺してしまう。二ツ栗家にお世話になっていたときに仲の良かった二ツ栗月夜は、けっきょく軍神の生贄になってしまう。吐月完は、彼女たちを助けることができなかった無力感に苛まれることになりました。
しかし、火蛾偲とカノに関してはどうでしょうか。吐月完は、彼女たちにたいして何かをした訳ではありません。しかし最後まで寄り添いつづけて、２人の生き方を変えているんですよ。
そう考えると、吐月完ルートのエンディングは味わい深いものになります。
一見するとヒロインは全員死んでいるし、スッキリとしない後味の悪いルートかもしれません。文鳴啾蔵ルートのほうが素晴らしいと思えるでしょう。
しかし、考えれば考えるほど、吐月完という男が好きになっていくんですよね。
だって私は、１つの執念を抱えつづけて何十年も生きてきた訳ではありませんから。
痛みを抱えてもなお生き続けている吐月完のほうが共感できるわけですよ。
初見のときはそこまで刺さっていなかったはず。しかし、ヒロインたちの想いを抱えてこれからも生きていくというこのエンディングは、時間が経つにつれて、どんどん好きになっています。
まとめ
ココがイマイチ
- もっと和姦エッチシーンも見たかった
- 大半の人物が悲惨な目にあう
ココがおすすめ
- ディテールに拘られた呪術の描写
- 現実世界とリンクしている
- 実用性の高いエッチシーン
- イケオジ主人公が最高
- 楽曲が素晴らしい
どうでもいい話ですが「呪術師」って相当言いづらい単語ですよね。
「呪術師、呪術使用中」
上記の言葉を早口で10回言ってみたください。
言えなかった人は本作を購入しましょう（横暴）。
痛みを抱えたまま生きる哀愁や、もう戻れないあの頃への羨望など、胸を締め付けるようなやるせない気持ちを味わえます。
＼ ＳＨＡＲＥ ／