【穢翼のユースティア】のパッケージイラスト

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【穢翼のユースティア】の感想

2022年7月7日 古城

6,420文字

また一人、少女が散る。

穢翼のユースティアAUGUST
【穢翼のユースティア】のパッケージイラストゲーム属性:シナリオゲー
ジャンル ―― ADV
発売日  ―― 2011年04月28日
パッケージ版価格  ―― 8,800円(税抜)
ダウンロード版価格 ―― 8,580円(税込)
スタッフ
シナリオ榊原拓/内田ヒロユキ/安西秀明
原画べっかんこう
総指揮るね
主題歌 ―― Asphodelus-アスフォデルス-(Vo.Ceui)
あらすじ

悲劇は往々にして不条理なものだが、これほど不条理という形容がしっくりくる悲劇もなかった。


その日、この都市の一角が多くの人命と共に大地へと崩落した。

性別、年齢、人間性、地位、経済力……

犠牲者に一切の区別はなく、ただそこにいたという一事だけが、彼らの命を奪った。

なぜ死なねばならなかったのか。

無数の死に何の意味があったのか。

答えはなく、残された人々に与えられたのは、輪郭のない茫洋たる喪失感だけだった。

後に《大崩落グラン・フォルテ》と呼ばれる悲劇だ。

あれからずっと、この都市ノーヴァス・アイテルには不条理の雨が降りけむっている。

上層から下層へと、都市を濡らした水は低きへ流れ、やがて牢獄にあつまり澱む。

嵩を増す汚水を取り除く術もないまま、囚人たちはただ喘ぐ。


いつの日か、この都市ノーヴァス・アイテルに陽が差す時が来るのだろうか。

――公式サイトより引用

評価

評価おすすめ度
【穢翼のユースティア】の評価★★★★★
満足度
満足度82点

作品の紹介

今回は【穢翼のユースティア】を紹介します。略称はありません。

当初、雑誌に載っていた「また一人、少女が散る。」というキャッチコピーを略して「またがる」と呼んでいる人はいました。

少しも定着していないので、「またがる」と呼んでも通じない可能性が高いです。笑

 

本作のジャンルは、AUGUSTオーガスト作品のなかでも異色の「ダークファンタジー」。過去作との方向性のちがいに戸惑いつつも、期待していた人は多かったでしょう。

しかし「東日本大震災」と発売月が重なり、震災をあつかっていた作品のため1ヵ月の延期をしました。

魔法少女まどか☆マギカ

時を同じくして、ダークファンタジーであるアニメ【魔法少女まどか☆マギカ】も放送延期したため、合わせて印象にのこっています。

 

世界観の構築がうまく、飽きずに読みすすめることのできるテキストが見事な作品。

所持証明(穢翼のユースティアのパッケージ)

私が所持しているのはパッケージ版です

どんな人向け?

  • AUGUSTのファン
  • ダークファンタジー好き
  • 飽きずに読み進めることのできる作品を求めている人
  • 評判の良い作品や、人気の高い作品を押さえておきたい人
  • 後述する本作のテーマに惹かれた人

攻略情報など

プレイ時間

私のプレイ時間は、ボイスをだいたい聞いて27時間ほどです。最初のエッチシーンまでは6時間半ぐらいかかりました。

 

攻略情報

比較的分かりやすい選択肢だと思います。推奨攻略順は、分岐順『フィオネ→エリス→コレット→ラヴィリア→リシア→ユースティア』です。

 

システム

難易度修正パッチシーンジャンプ機能
普通なしあり
備考

感想

どんなお話?

穢翼のユースティアの舞台は、浮遊都市《ノーヴァス・アイテル》

浮遊都市《ノーヴァス・アイテル》。

この都市は3つの階層から成っています。

王族や貴族がすむ《上層》。一般民衆がすむ《下層》。そして、下層の一部が崩落してできた《牢獄》

牢獄はスラム街になっていて、貧困・売春・暴力が横行しています。

カイムくんの応援バナー

本作の主人公カイムは、牢獄に住んでいる「何でも屋」。

彼は、依頼をもとにさまざまな人間と関わることになり、やがて世界の成り立ちや真相を知ることになります。

 

「不条理」のあふれた世界で、各キャラクターがどのような決断をし、どのように生きるのかが描かれている作品です。

 

 

特徴

女性にもおすすめ

本作は、我らがイケメン主人公のカイムくんにもボイスが付いています。

カイムくんのCVは大石恵三さん。全年齢版では近藤隆さんです。

 

また、牢獄を支配する組織《不蝕金鎖》かしらであるジークなど、魅力的な男性キャラクターが登場します。

ジーク「ああ、兄弟」

全年齢版のCVは三木眞一郎さん

主人公とヒロインとの掛け合いだけでなく、男性キャラ同士のやり取りが好きな人にもおすすめです。

 

惹き込み方がうまい

穢翼あいよくのユースティア】のいちばん良いところは、続きが気になり、飽きずにポンポンと読みすすめられるところ。

 

本作は5幕構成です。かんたんにストーリーを紹介します。

第1幕は、《羽狩り》と呼ばれる組織の隊長であるフィオネと強力して、世間を騒がせている《黒羽》なる怪物をとらえることが目的。

はたして黒羽は、どういう存在でどういう目的を持っているのか。

フィオネの背後に、黒い何かが舞い降りた。

生真面目で頑固だったフィオネは、カイムと接していくうちに柔軟な考えをもちはじめます。態度が変化していくサマが可愛いです。

 

第2幕は、主人公のカイムが友人のジークの頼みで、敵対組織の壊滅に協力するお話。

エリス「だって、身請けされてからの7年、私は、あなただけを見て、あなたの事だけを考えて生きてきたんだから」

病的なまでにカイムを愛しているエリスとの関係性の変化も見どころです。

余談ですが、マイフェイバリットヒロインがこのエリスちゃんです。

彼女はまさに「スラム街に咲く一輪の花」。ふっ……思わずクサい台詞を吐いちまったぜ。

 

第3幕は、いつ崩落するか分からない浮遊都市において、人々の心の支えになっている聖女イレーヌと従者ラヴィリアにかかわるお話。

聖女「救われるから信じるのではありません、信じることで救われるのです」

浮遊都市の秘密にせまることができるエピソードです。

 

第4幕は、王女リシアと、この国の政治にかかわるお話。

リシア王女「先ほどは世話になったな」

私が本作でいちばん好きなのが第4幕です。「王になる人間は、どう在るべきなのか」が描かれている成長物語。

 

第5幕は、ついにセンターヒロインであるユースティアがメインとなるエピソード。

ティア「正直に言うと、一人でいるのは寂しいです」

全年齢版のCVは南條愛乃さん

彼女がせおっている使命はどういうモノなのか。浮遊都市にせまる大きな危機にどう対処するのか。都市全体をまきこんだスケールの大きいお話です。

 

さて、かなり大雑把な説明をしましたが、何となくでもご理解いただけたでしょうか?

ストーリーが進むにつれて、いろんな立ち場の人間とかかわることになり、だんだんと隠されていた秘密が明らかになるのです。

異なる立ち場の視点をえることで、世界の見え方がかわるのです。

 

ルート分岐が切ない

本作のルート構成は、「ヒロイン脱落式」やら「階段分岐」とよばれる形式。

ヒロインのことを支えていくのか、それとも突き放すのかの選択を迫られます。

 

選択肢の選びかたによっては、ヒロインとの関係性が悪化することに……。

大げさな例をあげると、直前にプレイしていた個別ルートでは「好き」だの「愛してる」だの言いながら腰を振っていた女が、本筋に戻ったら「見損なったぞ」と言い、軽蔑してくるのです。笑

 

賛否の分かれる最終幕

先ほど大まかなストーリーを説明しましたが、終盤にいくにつれて様々な事実が判明して、いろいろな価値観にふれることになります。

そして大きな問題が差し迫ったときに、はじめてカイムくんは立ち止まり苦悩するのです。

それまでは「完璧・イケメン・俺TUEEE系主人公」だと思っていた彼の苦しむ姿をみせられます。

落差があるせいか、ヘタレ化したように感じる人もいるはず。

もちろん納得できる自然な流れでそうなっているんですが、おそらくここが好みの分かれる部分でしょうね。

さらに物語の〆方も、人によってはモヤッとすることになるかもしれません。

 

テーマに則って読むと面白い

【リシア】
「世の中には『出来る』ことと『出来ない』ことがある」

【リシア】
「同時に『する』ことと『しない』こともある」

【リシア】
「選択によって人が表現されるということだ」

自分ができることのなかから何を選ぶのか。

そして生きる意味を見つけることの大切さ。

この2点を意識しつつ読むと面白いですし、最終幕の展開にも納得できると思います。

 

 

エッチシーンについて

卑語なし。ピー音なし。アナルモザイクあり。

 

コレットとラヴィリアのダブルフェラ

おまけルートの3Pがエッチでした(小並感)。

取り合っている感じが最高でしたね。

 

カイム「っ……風呂より熱いな」

浴槽内でフィオネに挿入して「っ……風呂より熱いな」って言ったカイムくんに笑いました。これはセンスがいい。

 

 

ネタバレ感想

本作のどういう部分を好きで、どういう部分を改善して欲しいかをしたためました。

ネタバレ(クリックで展開)

 

ヘタレ化について

ティアルートでは主人公がヘタレ化したうんぬんと言われていますが、ストーリーの流れとしてはアレで正しいのではないかと思っています。

しかし好みの展開かと言われると ―― いな 。

このルートでは、カイムと対比するように「今まで『選択肢』によって突き放してきたヒロインたち」が自立し、決断し、行動にうつしはじめる。

コレット「今こそ、牢獄が救われる時です」

たとえばコレットは、ジークの提案にのる形で、叛乱軍の首謀者となります。

今まで「身近にある」と思っていたストーリーとヒロインが、主人公の周りから離れていき、大きく動きはじめる。

この感覚は、私は好きではありません。

求めていたものと違うのです。

たとえば、アニメ【新世紀エヴァンゲリオン】において、エヴァのカッコいい戦闘シーン目当てで見はじめたのに、終盤では主人公の内面の葛藤と向き合うことになる。納得できる流れだとしても「何か違うな……」となるのです。

エヴァの「おめでとう」のシーン

いや、葛藤するのもウジウジするのも全然オーケーなんですよ。

せめて吹っ切れてから、もう少しカッコいい活躍を見せてくれれば、「葛藤」の部分がポジティブな方向へ好転し、より肯定的に受け止めることができたんだろうと思います。

 

テーマ性が素晴らしい

前述しましたが、「自分ができることのなかから何を選ぶのか」と「生きる意味を見つけることの大切さ」。この2つが重要なファクターだと考えています。

システィナ「貴様に……ルキウス様の……何がわかる」

たとえばシスティナは、ルキウスにたいして好意をもち、彼の考えに賛同している。彼を助けることが生きる意味であり、彼の助けになることを選択しつづけるのです。

ルキウスはルキウスで、自分の考えに基づき、立ち止まることなく進みつづけます。

止まるんじゃねぇぞ

ルキウスとシスティナの、決して通うことのない両思いが切なすぎました。

 

いちばんテーマと噛み合っていて面白かったのは、やはりリシアルートでしたね。

リシア「本当に、私は何も知らないのだな」

何も知らずに、執政公ギルバルトの言いなりになっていたリシア。

彼女は、カイムと接していくうちに、自分の目でみて、自分の頭で考えるようになります。

リシア「命令だ」

彼女が覚醒して、どのような王であるべきかを見定め、大きな決断をくだす姿はカッコいい。

私がティアルートのカイムに求めていたのはコレなんだよなぁ。

リシア「父上……」

そして最後の最後に、隠されていた父親の愛情に泣かされるとは思いもしませんでした。

 

さて、テーマを語るうえで外せない人間がいます。

それは「ガウ」です。

彼女は、カイムと同じような境遇でありがながら、最後まで生きる意味を見つけることができずに死んでいくのです。

ガウ「人の生ってものに、どれほどの意味があるのか」

システィナやルキウスみたいに、死んでいったキャラは多くいますが、死に様をみるに、やはり「生きる意味を見つけること」と「自分ができることのなかから何を選ぶのか」は重要なんだろうと思います。

そう考えると、ユースティアの決断はどうでしょう。

ティア「カイムさんは、最後にわたしを選んでくれました」

彼女は自分の使命(生きる意味)をみつけ、大好きなカイムを助ける(自分にできることを選ぶ)のです。

「自分の意志で、カイムさんを救うことを選んだんです」

私は「生き様」と「死に様」を重要視するので、これは決して悲しいバッドエンドだとは思わない。

むしろ、納得のいく綺麗な〆方だと思います。

今までヒロインを突きはなして自立を促してきたカイムさんが、最後にはヒロインから突きはなされて自立することになるという、「逆の構図」になっているのはマジで面白い部分だと思いますね。

稲穂を抱えて佇むティア

稲穂をかかえて佇むティアちゃんの姿がマジで切なくて泣けます (´;ω;`)

 

その他

他にも、サブキャラのアイリスが良いキャラしていることとか、メルトさんがいなくなっちゃったのが寂しかったこととか、コレットとラヴィリアが抱き合って落ちていくCGが好きだったこととか、ラヴィリアのCVの桐谷華さんが最高なこととか、相変わらずの「王がスト」を見られて安心したこととか、タイトル画面が変化する演出が好きなこととか、語りたいことはいっぱいあるんですが、長くなりそうなのでこのへんで終わりにします。

 

まとめ

ココがイマイチ

  • 恋愛描写は弱い
  • ほろ苦い展開がある
  • 最終ルートの主人公
  • セクハラされたりと、若干の処占NG展開あり

 

 

ココがおすすめ

  • グラフィック・システム・演出・音楽のどれもが高水準
  • 主題歌は、楽曲だけでなくムービーも素晴らしい
  • 先が気になりクリックする手が止まらない
  • イケメン主人公
  • エリスが可愛い
  • ティアが健気
  • 3Pが良い
  • おまけエピソードあり

 

 

暗い話が嫌いな人、完全無欠のハッピーエンドが見たい人、頭を空っぽにして楽しめる恋愛ストーリーを求めている人、当感想記事をみて合わなそうに感じた人は回れ右。

それ意外の人には、わりとおすすめしやすい人気作。

飽きずに読み進められる作品は貴重です。

パッケージ版

ダウンロード版

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